1話 ページ2
FFIの開催式を終えた次の日の朝。
日本代表の皆は､ スペイン代表のキャプテン｢クラリオ･オーヴァン｣と手合わせをする事になったらしい｡
これから室内グラウンドでクラリオ対日本代表の小さな試合が始まろうとしている中､ 観客席の通路で一人の少女と日本代表の監督が代表達を眺めていた｡
「遅かったですねぇ､ 紅月チャン｡ 昨日姿が見えなかったので､ 道に迷ったのかと心配しましたよ〜｡」
「昨日は参加出来なくてすみません､ 趙金雲監督｡ 遠くに居たので､ 時間が間に合わなかったんです｡」
紅月と呼ばれた少女､ 「紅月A」は監督を見ながら申し訳なさそうに眉を下げた｡
監督の趙金雲は"おーほっほっほ!"と笑って、ニィッと笑みを浮かべた。
「紅月チャンの事情は解っていますので安心してくださぁーい! …それで､ 今のこの選手たちを見て､ どう思いますか?」
趙金雲は不思議な質問をAへと問い掛けた｡
質問の意味が解ったAは､ クラリオのシュート技「ダイヤモンド･レイ」に寄り､ 威力で吹っ飛ばされてしまう皆を眺めながら､ 小さく目を細める｡
「…まだ世界のレベルには届かない､ って感じでしょうか｡ あんなにDFが居てもクラリオのは放ったシュートを止められない…それどころか､ 威力を落とせないでいる｡ 」
「流石､ "天空の熾天使"チャンですねぇ〜! 観察力と洞察力は落ちてないみたいですね〜｡ 」
「当たり前です､ サッカーをしてなくても試合は見てましたから」
趙金雲の褒めに照れてしまったのか､ Aは頬を薄く赤色に染めながらフイッとそっぽを向いてしまう｡
クラリオが去り､ 差を見せ付けられた皆は俯いて暗い雰囲気が漂う｡
Aは皆を一瞥した後､ "そろそろ皆さんと顔を合わせに行きましょう"という趙金雲の言葉に踵を返して室内グラウンドを出ていった｡
.
クラリオとの手合わせを終えて､ 趙金雲に呼ばれてミーティングルームに集まった皆｡
Aは趙金雲の隣に立って皆を見渡していた｡
見知らぬ顔の少女に皆は不思議そうにAへと視線を送る｡
…とある1人は､ 驚いた顔を浮かべている｡
「あの､ 監督…この女の人は?」
「事情により昨日開催式に来れなかった､ "紅月 A"チャンでぇ〜す!皆さん､ 仲良くしてくださいね〜?」
趙金雲の言葉により､ 皆は開催式の発表で唯一の女性選手を思い出して納得の表情を浮かべた｡
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作者名：りはる x他1人 | 作成日時：2020年3月20日 16時
