23話 ページ24
Aは吉良を立ち上がらせた後、そっとイレブンバンドを見た。
表示されている数字は丁度予定の時間だった。
「もう時間だし、そろそろ…」
「待て、あと一回相手をしろ」
「また…?」
相変わらず懲りない吉良に苦笑いを浮かべるも、仕方ないと足元にあったボールを脚で吉良の元へと転がす。
「次は必殺技を使え」
「必殺技?」
「嗚呼。だけど試合で使った技じゃないヤツだ。」
「…何で?」
「い、いいから早くしろ!」
吉良は何故か頬を赤く染めながら顔を逸らす。
何で頬を赤くしたんだろう、とAは不思議そうに思いながらも肩を竦めると技を出す体制を取る。
体制を取ったAを見れば、吉良も奪われないように脚でボールを固定する。
するとAはそのまま素早く吉良の方へ走り出した。
「───やっぱり、アイツを使えば…」
綺麗に舞う金色の羽を見ながら、扉の隙間から覗いていた一人の少年はぽつりと呟いた。
.
「…おい、ヒロト。大丈夫か?」
「…あ、嗚呼…。」
「……本当に大丈夫なのか?」
1対1を終えた後、ミーティングルームに集まった吉良は元気がないような、少し暗いそんな様子で基山の隣へ座った。
基山は心配で声を掛けるが、吉良は表情を変えずにそのまま小さく頷く。
「Aさんと何かあったのか」と基山は思うも、あまり触れない方がいいのかと声を掛けることをやめた。
「(やっぱりアイツはすげぇ……Aの必殺技は俺以上の威力だ。…流石"天空の熾天使"。)」
吉良は横目で西蔭の隣に座るAを見る。
だが直ぐに目を逸らして、忘れようと軽く顔を横に振った。
「(素直に私の必殺技が見たい、って言えばいいのに…)」
Aも同じように横目で吉良を見ては、小さく笑うように口角を上げた。
「おーほっほっほっほ、全員集まったようですねぇ。これから次に対戦する、オーストラリア代表の試合映像を見てもらいます」
監督が端末を操作すればモニターに映像が映る。
映された映像は緑色のサッカーフィールド……ではなく、大きな葉っぱ。波の音。
そして大きな葉っぱを退けて、水着のような衣服を着た女の人が現れた。
《シャチョーさん、ココ、ハワーイじゃないネー》
「おっとこれは、ナターシャとハワイアンセンターに行った時の映像でした;;」
「(最初から思ってたことだけど…監督って本当変な人。)」
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作者名：りはる x他1人 | 作成日時：2020年3月20日 16時
