唯,貴方だけが (ページ10)

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そして昼

私は指定されていたおでん屋(といっても屋台だが)に向かっていた

のれんをくぐれば彼とおそらくセルメダルを入れているだろうタンクが目に入る

｢いらっしゃい,お嬢ちゃん｣

声をかけてくる店主に会釈をし“伊達さん”と声をかける

｢お,来てくれたんだ｣

『まあ,約束でしたし』

｢そっか｣

“とりあえず座れば?”と言われ隣に座る

こういう屋台は初めてで,何故か緊張していた

｢何食べる?せっかくだし奢るけど｣

『いえ,自分の分は自分で出しますから』

｢でも…｣

『大丈夫ですから,お気になさらず』

未だ何か言いたげな表情をしていたが気づかないフリでとりあえず卵と大根を注文する

一口かじれば味が染みてて美味しい,と思った

｢あ,笑った｣

『…?』

｢今それ食べた時,笑ったでしょ｣

そう,だろうか

正直に言えば“笑う”ということがよく分からなかった

幼い頃はよく笑っていたとは思う

しかし最近はといえばどうだろう

自虐的な笑みなら何度かしていたかもしれない

ただ,自然に笑う,ということは…

そう考えていた時だった

｢ｵｯｵｯｵｯｵｯ｣

ヤミー出現を知らせるセンサーであるカンドロイド,ゴリラカンが反応したのは

｢おっ,お仕事ですか｣

メダルタンクを担いで席を立った彼は不意にこちらを向き

｢またその笑顔見せてよ｣

そう言った

そんな彼を見送ったあと鞄から2つのカンドロイドを取り出し起動する

《タカカン!》

《バッタカン!》

『バースの記録,頼むよ』

バッタカンを連れ飛び出すタカカンを見送りながら少しだけいつもより多くの情報が欲しいと思った