恋泥棒から予告状。【及川徹】 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:347 hit

お迎え。ページ4

ホームルームの終了と共に教室を飛び出し、隣のクラスの扉を勢いよく開ける。

｢及川くーん！どこ行くつもりかなー？私とお話があるの忘れちゃった？｣

鞄を持って逃げ出そうとする彼を引き止めると、引きつった笑顔で振り返ってきた。

｢あ、はは。ごめん、ちょっと腹痛くてさ……。｣

及川が、青白い顔でお腹を擦りながらそう話すと、後ろから声が飛んでくる。

｢嘘つけよ！お前さっきの体育、めっちゃ元気に動いてただろ！！｣

｢ちょっ……！阿部っちは黙ってて！！｣

すると、阿部っちと呼ばれた男子は、楽しげな笑い声をあげて、

｢お前が素人相手に本気でサーブ打つからだ！ざまあみろ！！｣

とふんぞり返った。

どうやら体育はバレーボールだったらしい。

｢って事だから、Aちゃーん。そいつ健康だよ。｣
｢あ、うん、ありがとう阿部っちー。｣

全く面識が無かったが、向こうは私の名前を知っていたので、あだ名で呼ばせてもらう。

すると阿部っちは少し目を見開いて、苦笑いを浮かべた。

｢冗談だって。許せよ。｣

そう言うと、及川の肩を叩く。

訳が分からず、及川を見上げると、拗ねたような怒ったような顔をしていた。

男子の会話は、いつも難しい。

｢……ね、及川？あんたもこれから部活なんだし、お腹痛くないなら早く行くよ？｣

彼の裾を引き、そう急かすと及川は嬉しそうに笑って頷いた。