お前が悩みの種。 ページ3
「あ、あの……。」
ギャンギャン喚く千花ちゃんとは違う声が聞こえ、私はパッと顔を上げる。
「朝霧先輩……、ですよね?私、1年生の紫ヶ崎萌絵です。」
美人でお淑やかな彼女は、そう言って頭を下げた。
1年生がわざわざ教室まで来たということは、ご相談だろう。
「萌絵ちゃんね?朝霧Aです。今日はどうしたの?」
私は、威圧感を出さないように、出来る限り優しく微笑んだ。
先輩ってだけで、かなり恐いだろうと思った為の配慮だ。
だが、私の渾身の笑顔を見たクラスメイトは、身震いをして通り過ぎていく。
隣に居る千花ちゃんは「寒っ……!」と、呟いた。
「私、好きな人が出来て、告白をしようと……。」
可愛らしく頬を赤らめながら、彼女はそう言った。
嗚呼……、美少女は動作まで美しいのか。
「お相手って、聞いてもいい?誰にも言わないから。」
「は、はい!あの……、及川先輩、です。」
…………なんて?
「……及川って、あの及川かしら。バレー部の。」
「そうです!バレー部の。」
私は思わず頭を抱える。千花ちゃんは込み上げてくる笑いを抑えようと必死になっていた。
「……萌絵ちゃん。酷いことを言うけれど、貴方は騙されてるの。確かに顔は良いかも知れないけれど、大切なのは中身よ中身。」
「は、はぁ……。」
突然の年寄りじみた説教に、彼女は唖然としている。
そりゃそうだ、私だって自分がこんなありきたりな台詞を吐くなんて思ってなかった。
「だからね、1回持ち帰ってゆっくり考えてみて?今日はもう昼休みも終わるし。」
「……はい、分かりました。」
物分りの良い彼女は、それ以上詮索することなく、一礼して大人しく自分のクラスへ帰って行ってくれた。
「A、なにするの?」
千花ちゃんはちょっと不安そうに、そう尋ねてくる。
大丈夫、流石の私も命まで奪う気は無いから。
「及川にメールする。」
ポケットからスマホを引っ張り出すと、「放課後、話があるの。」とだけ打って送った。
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作者名:あまめすん。 | 作成日時:2019年7月7日 17時