一目惚れ (橙) 2 (ページ34)

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ただいまページ34

もう気づいたら帰り道だった。

星空を見て「綺麗…」なんて思うくらいには気持ちに余裕が出来た。

あの後、…

部長のおかげで朝礼で社員全員の前でご報告することが出来た。

みんなに祝福されて、終いには部長から花束をいただいた。まるでこの間見た丸ちゃんの朝のニュースと一緒だった。

「まだ、私寿退社なんて言ってないのにな。」

仕事環境に恵まれていることに今更ながら痛感して涙が溢れそうになる。

丸ちゃんも、こんな気持ちだった…？

「私、こんなに幸せなんて思ってもいいの、かなぁ。」

ずっと不思議だった。

丸ちゃんに出会ってから、ずっと、

ずっとふわふわで、申し分無いくらい私は

丸ちゃんの愛に溺れている。

「ほんとに、いいのかな。」

帰りはちょっと寄り道して最近出来たばかりのケーキ屋さんへ行って、好きな物を選んで丸ちゃんと食べよう。

これが夢ではなくて現実だって、分かるように。

ガチャ…

「ただいま」

しんとしたいつもの自分の部屋に、私の声に反応してタッタッタ…なんて誰かの駆ける足音。

「おかえり～～」

にへ、なんて笑って「自信作の粕汁作ったで～あったまるぞ～」と伝えるとそそくさとリビングへ戻って行く。

な、なんだ…会いたくて来たんじゃなくて、

ご飯……ね(涙)

「丸ちゃん～？これケーキ買ったからご飯食べたら一緒に食べ……」

ぎゅーっ

「っ…！」

「ん～？そっかぁ、ケーキね。ありがとう。何かなぁ。。。」

「や、まだ手洗ってないし…」

「もう、待てへんって。」

まだ何も言っていないのに、会社で祝われたことが伝わっているかのように丸ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

「あ、あのね。これ…も、丸ちゃんのお花と一緒に飾ってもいい…？」

紙袋に閉まってあった花束を見せると

「…あっ、俺のと色違いやん。」

「そうなの(笑)」

話しながら、手を洗いに洗面所へ行こうとすると

ぎゅーっとしたまま丸ちゃんが付いて来て

「手、洗いに行くだけだよ？」

「んー？でもこのままがいい。」

ピョコピョコ動きながら、鏡越しに私のことをじっと見つめている。

うがいと手洗いを終わらせて

チラッ…なんて一瞬だけ丸ちゃんを見ると

「はよ、ご飯食べよ？」

歳上なはずなのに、上目遣いの破壊力がハンパではなくて私はもう…丸ちゃんには敵わないんだなぁと

顔を背けてふわふわな頭をよしよしと撫でることしか出来なかった。