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誰かが音に気がついてでてくるようなそぶりはなかったけれど、私たちは急かされるように走った
『大丈夫だったの?』
合間に聞くと、
「いや、死ぬかと思った」
そんなにひどいことをされたのだろうか
「会いたくて」
動悸が早くなったのは走っているせいなのか、それとも。
.
この間来たばっかりの防波堤に登る。
『ここからだと、ユンギの家見えないね』
「大丈夫、バレないよ。多分。」
『多分?』
「うん」
新月だった
月の明かりがない夜は、暗くて、だけど星が綺麗に光っていた
ユンギの手が私の足に触れる
こないだの傷が治っていないまま走った足には、少し血が滲んでいた
「痛いか?」
『少し』
.
夜だけれど蝉が鳴いている声が聞こえて、どこかしらわたしたちを監視しているかのようだ
「多分、俺たち、運がすげー悪いのかもな」
波の音、蝉の声の中、ユンギの声は私の耳にすっと入ってくる
『そうかもね』
ユンギがどんな顔をしているのか気になって、横を向いたけれど、暗くてよく見えなかった
『でも、私、ユンギに会えたことだけは、運が良かったと思ってるよ』
気恥ずかしいことだって、今なら言える気がした
「使い果たしちゃったのかもな」
.
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Yellow8938(プロフ) - 朝早くからすみませんいつも楽しくお話拝見させて頂いてますTwitterフォローさせて下さい宜しくお願いします (2022年1月11日 6時) (レス) @page33 id: 33b6e6a7a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺夢 | 作者ホームページ:https://twitter.com/ki5tm9?s=21
作成日時:2021年11月19日 1時