世界一強欲な女の話【七海龍水】 (ページ2)

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南の語る龍水の性格に、皆が尻込みした。即決できぬほど癖の強い性格を持つらしいが、帆船の船長としては右に出るものはいない。どちらを優先するか皆でじっくり考えようとするが、超がつくほど合理主義な千空はいそいそと懐から復活液を取り出し、龍水にかけてしまっていた。

千空は悪びれもせずに「腕優先に決まってんだろ」と言い放つ。そうしている間に龍水の表面の石に亀裂が入り、剥がれ落ち、石化が解けようとしていた。

「はっはー！戻ったぜついに！世界は再び俺の物だ！！」

高らかに響く声とフィンガースナップ。たった二言、たったのそれだけで龍水がどんな人物なのかを大雑把に把握した千空たちは皆一様にげんなりとした。南が「ね？」と千空を非難する。だから言ったでしょ？

龍水は五人を目にし、どうやら彼らが自分の恩人であるらしいことに気づいた。そこで己の執事であるフランソワに謝礼の小切手を用意させようとまた指を鳴らしたところではたと気づく。眼前に広がるのは雄大な自然。意識を失う前にあった七海学園の大きな建物は影も形もない。「……フゥン？」龍水はすぐさま状況を把握した。なるほど、一度文明が滅んでいるな？

文明が滅んでいるということは、今まで一族で築き上げてきた功績や財産や歴史が全て失われるということである。財閥の御曹司である龍水には非常に痛い状況なはずだが、裏腹に龍水は高笑いした。つまり世界中の所有権は失われたのだから、今からなら全てが手に入る。そんな考えに至るのは龍水くらいなものだった。

ひとまず服を手に入れた龍水。ぐるりと辺りを見回して、己のすぐ傍に立つ石像が目に入った。

「はっはー！探す手間が省けた！えらいぞA、起きたら褒めてやろう！」

そして当然のように女の石像を担ぎ、千空に向かって不遜に「拠点はどこだ？案内しろ」と首を傾げる。千空は小指で耳をほじりながら、「あー、それを持っていく気か？」と尋ねる。

「悪いが石化復活液は残りが少ねえ。テメーの大事な奴だろうと今は優先順位ってのがある、我慢してもらうぜ」
「文明の滅びた今、俺を優先して起こした理由は航海術が必要だからだ。違うか？」
「いや、違わねーよ」
「ならばこいつも必要だろう。本物の医師でこそないが、こいつは船医だ。海に出るなら医者は不可欠。それとももう医者を確保したか？」
「いや……クク、わーったよ。だがタイミングは俺に任せてもらうぜ」