世界一強欲な女の話【七海龍水】 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:9,267 hit

１．七海龍水という男ページ1

「———アタシらが作ってんのは帆船じゃあないか。そんなもの乗り回してた奴がいるのかい？現代人でさ」

石神千空はただの科学好きの男子高校生であった。ひょんなことから世界初の人類(暫定)になり、たまたま復活させたお仲間の一人と戦争に発展し、ついこの間終結した。この話は長くなるので割愛する。

とにかく、今千空と仲間たちは船が必要だった。船の設計をとうに終え、さっそく船作りに取り掛かっているところである。しかし必要なのは船だけではない。船に乗るのに必要なもの、その最たるものが『船長』である。いくら船が立派だろうが操縦できなければ海に沈むほかないのだ。

そんなこんなで千空、大樹、コハク、マグマ、ニッキーの五人は、元記者である北東西(ほくとうざい)南(みなみ)の案内のもと、船長候補がいるという七海学園へと向かっていた。

「トレーニング用とかだけだね〜。さすがに普段から帆船なんて人はたぶん世界中を探しても……」

いない、と続こうとしたのだろうが、南はそこで一度言葉を切る。何かに気づいたように「龍す……」と漏らしたが、なんでもないと誤魔化した。

七海学園は海洋系の学校で、船の操縦について学ぶ。本格的な帆船の操縦を学ぶわけではないが、学習の一環で帆船の操縦もかじるという。教える側の教師ならば帆船の操縦くらいできるだろうとは南の弁だ。

上陸した五人はさっそく辺りを掘り返し———といっても千空は非力なので千空はもっぱら指示役だが———たくさんの石像を見つけ、並べてみた。並んだ石像は南が物色し、以前取材に来たときのことを思い出しながらめぼしい人物を探す。

一通り眺めていた途中、南が鋭く息を呑んだ。その視線の先には二体の石像があった。片腕を掲げて、石化していなければ瞳をギラギラと輝かせんばかりの男の像に、何かを庇おうと立ちはだかる女の像が寄り添っている。人の好い大樹が「ああそれか！寄り添っていたから大事な人なのだろうと思って」と隣に並べた理由を述べた。

「ダメダメ！やめた方がいい、彼は！」

南が必死の形相で立ち塞がるが、千空に促されて彼(・)の解説を始める。

「ここ、七海学園のオーナーは海運業の王様、七海財閥。グループ総資産200兆円！その一族のとんでもない道楽息子が———この彼、七海龍水……！」

中学生の時分に帆船を作らせ乗り回していたとんでもねえ坊であった。