No.21 気持ち ページ24
気がつけば口が勝手に開いて、言葉を発していた。
「相澤さんですよね……？」
「……何言ってんだ」
我ながら何を言っているのか良く分からなかった。明らかに愚問である。そして合理性にも欠けていた。答えは分かりきっているというのに、万が一に期待してしまっていた自分がいた。
相澤は、意味が分からない、と怪訝そうな様子でAを見ている。
「聞いてみたかっただけです。すみません、もう良いですか」
「あぁ……時間取らせて申し訳なかった」
「いえ。全然大丈夫です。では」
なんとも言えないような空気感に包まれた室内で、言い訳のように終了を切り出した。相澤にももう話す事はなかったようで、帰宅許可はあっさり出た。
扉の前で一礼してから、目の前のそれを閉める。
歩き出すと同時に、Aは大きな溜息を吐き出した。
(もし……もし織田なら、って……馬鹿だ。私)
何で、そんな“奇跡”を望んだのか。自分でも全く理解できない。現実は、過去は、未来は、たった一つしか待ち受けていないと言うのに。
いつからこんなに馬鹿になってしまったのだろうか。己に呆れ苦笑しながら、織田の姿を思い出す。
緋色に染められた少し癖った髪。水晶玉に
『A』酒場で会うといつものように名前を呼んでくれた場面を、鮮明に覚えている。
あの時──最期に彼が放った言葉も、一秒前の物事のように目の前に現れる。
『
(ああ、そうか。そう言うことか……)
今。今頃気づいた。何故、今まで気付かなかったんだろう。いつから馬鹿になったのか。それは織田に会って、喋った瞬間からだ。
(私は────)
少し天然で。
小説家になりたいからと、人を殺すのを辞めて。
行く当てもなかった孤児を育てて。
困っている人を必ず助けに行き、誰かの為に動け、死んでいった織田が──
「……好き、だったんだね」
言葉に出しても、余り実感が湧いてこなかった。本当はもっと最初から気づいていたのかもしれない。
ずっと気づかないふりをしてきた。自分の中にあった何かが壊れ始めて、その要因が織田という事に。
──もし、自分に大切な人ができたら、きっと自分は縋り付いて離れなくなる。織田にとっての呪い、足枷になりたくなかった。
「……愛してる、かも知れない」
言ったことのないセリフで、つい不安定な口調になる。
独り言で、ただの自己満足でしか無いこの思いを伝えていれば、織田はどう答えてくれただろうか。
桜の舞う道を歩きながらも、1人考えた。
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92Uranium(プロフ) - 流暢じゃなくて悠長だと思うんですが勘違いでしたらすみません (2023年2月24日 16時) (
レス) @page48 id: 30affeabb2 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 誠に申し訳ございませんが、検索よけのため、引っかかるキーワードが含まれているコメントは削除させて頂きます。ご理解お願い致します。 (2023年1月18日 22時) (レス) id: 554508b1f5 (このIDを非表示/違反報告)
ﾃﾝﾌﾟﾗさん(プロフ) - No.19の量量は要領でしょうか？ (2023年1月16日 16時) (レス) @page22 id: ac3994717f (このIDを非表示/違反報告)
s(プロフ) - あやうる…？あらゆるですかね (2022年10月10日 3時) (レス) @page37 id: 24c6dcc0b6 (このIDを非表示/違反報告)
ペネロッペ(プロフ) - 学校のiPad……お揃いですね！私は携帯が使いにくくて学校のiPadを…授業中に…… (2022年10月7日 12時) (レス) id: 4e7520e5da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑞樹 | 作成日時：2022年9月20日 21時
