No.17 寂しそうに ページ19
何かを言いたくても、喉に言葉が引っかかって声が出なかった。沈黙する緑谷に、Aは決定打となるようなことを打ち込んだ。
「怪我直したから早く立て。……私はお前みたいな奴が嫌いなんだよ」
「え……？」
体は全く話に追いつけないが、妙に頭は冷静だった。
確かにさっきからの態度からして、自分のことが嫌いなのは分かった。目は逸らされるし、冷たく見つめられるし。明らかに好意は抱かれていない。
しかし、緑谷は金子と喋ったことはないのだ。これが初めてだ。自己紹介している時も、そこまで自分を嫌っている様子はなかった。
(何かしたっけ……。僕が怪我したから……？)
答えが出ず詰まる。過去に彼女と会った事があっただろうか。
やはり今回の自分の怪我でAは怒っているのだろう。謝らなければと思うも、どのように言えばいいのか迷って、発言できなかった。
「ちょっと、何言ってんねん！ デクくんに謝って！」
緑谷が考えている所に麗日が駆け寄って来て、金子の言動を咎めた。緑谷を庇うようにして、麗日が前に立っていた。
ピリピリとした雰囲気の中、Aは背中を後ろに向けて、震える、小さな声で言った。
「ごめん……」
緑谷には、大人びた雰囲気を放っていた彼女が、小さな、泣き出す寸前の子供のように見えた。
Aが去っていくのを、緑谷は呆然と見ていた。
「何あの人……雰囲気悪いね」
麗日が、怒ったように言う。デク君は何も悪い事はしてないのに、とAを敵視したように言った麗日に、緑谷は言葉を返した。
「……いや。別に謝ってくれたんだしいいよ。それに……」
「それに……？」
「……何か、とても寂しそうに見えたから」
麗日は、何を言っているのか分からないように首を傾げる。
対して緑谷は、彼女を救いたい、と思った。
何か、何か役に立てることがあるのでは無いか。悩みがあるのなら助けてあげたい。余計なお世話はヒーローの本質であり、彼自身の性格とも結びついているからだ。
まさか、緑谷は思いもしない。
それが彼女に取っての“地雷”であり、踏み入れられたく無い領域である事を──
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 481人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ヒロアカ」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
92Uranium(プロフ) - 流暢じゃなくて悠長だと思うんですが勘違いでしたらすみません (2023年2月24日 16時) (
レス) @page48 id: 30affeabb2 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 誠に申し訳ございませんが、検索よけのため、引っかかるキーワードが含まれているコメントは削除させて頂きます。ご理解お願い致します。 (2023年1月18日 22時) (レス) id: 554508b1f5 (このIDを非表示/違反報告)
ﾃﾝﾌﾟﾗさん(プロフ) - No.19の量量は要領でしょうか？ (2023年1月16日 16時) (レス) @page22 id: ac3994717f (このIDを非表示/違反報告)
s(プロフ) - あやうる…？あらゆるですかね (2022年10月10日 3時) (レス) @page37 id: 24c6dcc0b6 (このIDを非表示/違反報告)
ペネロッペ(プロフ) - 学校のiPad……お揃いですね！私は携帯が使いにくくて学校のiPadを…授業中に…… (2022年10月7日 12時) (レス) id: 4e7520e5da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑞樹 | 作成日時：2022年9月20日 21時
