愛もクソです。【七海建人】

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「……、ご飯、食べますか？」

「はい、」









(あぁ、嫌だな)




自分が嫌になる。

ちゃんと話し合って決めたこと。
　




呪術師として生きることを彼が望んでいるのなら、妻として応援しなくてはいけないのに。

支えなくてはいけないのに。







(もう危険な場所に行ってほしくない、なんて)






そんな自分勝手な我儘ばかりが浮かんでくる。









「……Aさん」

「はい、」

「＿＿＿＿すみません、そんな顔をさせてしまって」









そんな顔って、どんな顔だろう。

きっとひどいのだと思う。





ごめんなさい、私。

そんなに出来た人間じゃなくて。





だからせめて、笑っていたいと思う。

いつだって貴方の帰る場所でありたいと思う。









「いいんですよ。私は、建人さんにおかえりなさいって言えたらそれだけで」

「……、」

「んー、でもそうですね。1つだけ我儘を言ってもいいのなら」









建人さんの瞳が、私を映す。









「……抱きしめてくれませんか？」









一度だけ驚いたように瞬きをすると、ゆら、と彼が私に近づく。

ぎこちなく抱き寄せられて、彼の香りに包まれて。





とてつもない安心感が、私を襲う。









「……ありがとう、建人さん」








きっと私の気持ちに気付いている。

だから、彼は少しだけ苦しそうにしているのだと思う。





呪術師として生きるということが、どういうことかを私たちは知っているから。









だから今は、ただ。

幸せだけを感じていたかった。









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