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「……あ、お弁当!」
彼を見送って、洗濯、掃除と家事をこなしていく。
掃除機をかけているときに見えた、普段あるはずのない四角の箱。
建人さんのお弁当だ。
忘れていくなんて、珍しい。
私は簡単に身なりを整えると、お弁当を片手に高専へ向かった。
久しぶりに通る懐かしい道。
ふと蘇るあの頃の記憶は、私には少し眩しかった。
辿り着いた門の前でウロウロする。
勢いで来てしまったものの、携帯を忘れた。
「あのー、」
勝手に入っていいものか、としばらく悩んでいると、後ろから声をかけられて。
ふと振り向くと、そこにはきょとんとした男の子二人。
「高専に何か用ですか?」
「あ、えっと」
「俺たちここの生徒っす」
「……後輩くんかぁ、」
自分が逃げ出した道に、今でもこんなに若い子がいる。
当たり前のことだけれど、少しだけ苦い感情が湧き上がった。
「七海さん、どこにいるか分かりますか?」
「ナナミン?」
「な、ナナミン…?」
「おい、虎杖!」
「ナナミンなら…」
「ふ、あはは!ナナミンっ、」
私が突然笑い出すと、不審そうに眉を潜める黒髪の男の子。
いやごめんね。
だってあんなにも堅物な彼がそんなに親しげなあだ名をつけられてるとは思わなかったから。
「案内してもらっていいかな?…ええと、」
「虎杖悠仁!よろしく!」
「…伏黒恵です」
「虎杖くんと、伏黒くん」
「ところでアンタは…」
「あぁ、ごめんね。七海A、ナナミンの妻です」
「えー!!ナナミンの!?」
「ふふ、そう。ナナミンの」
私が笑うと、彼らは警戒を解いてくれたようだった。
二人とも、優しそうだなぁ。
こんなキレーな奥さんがいたんだなー!なんて言ってくれる虎杖くんは、圧倒的癒やし系。
おい、と虎杖くんの暴走を止めようと焦る伏黒くんは、絶対にいい子。
こっち!と前を歩く二人を見ていると、何だか私まであの頃に戻ったような気分だった。
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conny(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年3月26日 2時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 如月さん» わああそんな風に言っていただけて本当に嬉しい限りです!ありがとうございます…!如月さんに読んで頂けて良かったです。素敵なコメントありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 美姫さん» 感動していただけて、また最高の形だと言っていただけるなんて、本当に描いて良かったです…!こちらこそ美姫さんにとても嬉しいお言葉を頂けて感謝の気持ちでいっぱいです!ありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - チエミさん» 素敵な作品だなんて…!私の小説で嬉し泣きして頂けるなんて、こんなに嬉しいことはありません…!チエミさん、本当にありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - もちもちさん» ナナミン推しの方にそう言っていただけると、本当に描いて良かったと思えます。もちもちさん、こちらこそ本当にありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向 | 作成日時:2021年1月23日 22時