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ピンポーンと、無機質なチャイムが鳴って、意識が鮮明になっていく感覚。
途端に周囲の情報が頭に溶け込んできた。
あれからどれだけの時間が経ったのか、皆目検討もつかない。
空白の時間。
(……私、何してた?)
まるで放心状態に陥っていたことに、漸く気付いた。
恐らくは自己防衛。
何も考えないことでしか、自我を保てなかったのだと思う。
「A!」
外で呼ばれた私の名前。
ドンドン、と戸を叩く音。
(_____あぁ、煩いな)
どうしようもなく、煩い。
全ての情報を、今は取り入れたくなかった。
何か少しでも理解しようとしてしまえば、急速に自分が壊れていく気がしていた。
それでも、この声は。
(……行かなきゃ)
ゆら、と立ち上がって、玄関に向かう。
見慣れた扉に、何かが溢れそうになるのを必死に抑え込んだ。
『 行ってきます 』
……嫌だ。ねぇ、嫌だよ。
行かないで、独りにしないで。
何にもいらない。他に何も望まない。
______だから、
ガチャ、と扉を開けた勢いのままに、膝から崩れ落ちる。
慌てた様子でしゃがみ込んだ彼の襟を、ほとんど無意識に掴んだ。
「_____殺してください、……五条先輩、」
「……A、」
「…あなたは最強でしょう……っ、」
ぽろ、と溢れた雫。
堰を切ったように溢れ出す感情に、頭が回らない。
最低なことを言ってる。
そんなことは分かっているのに。
それでも何かを吐き出していないと、何かに当たっていないと、おかしくなってしまいそうで。
そっと私の背中を撫でる彼の優しささえ、今の私には酷く苦しくて。
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「どうして貴方は、そう死に急ぐんですか」
近づいて来ていた足音にも気づけなかった。
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conny(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年3月26日 2時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 如月さん» わああそんな風に言っていただけて本当に嬉しい限りです!ありがとうございます…!如月さんに読んで頂けて良かったです。素敵なコメントありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 美姫さん» 感動していただけて、また最高の形だと言っていただけるなんて、本当に描いて良かったです…!こちらこそ美姫さんにとても嬉しいお言葉を頂けて感謝の気持ちでいっぱいです!ありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - チエミさん» 素敵な作品だなんて…!私の小説で嬉し泣きして頂けるなんて、こんなに嬉しいことはありません…!チエミさん、本当にありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - もちもちさん» ナナミン推しの方にそう言っていただけると、本当に描いて良かったと思えます。もちもちさん、こちらこそ本当にありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向 | 作成日時:2021年1月23日 22時