愛もクソです。【七海建人】

愛もクソです。 ページ1

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「労働はクソです」









背後から、僅かに張った声が聞こえた。

こんな時間に人が来るとは思っていなかったため、ビクリ、と肩を揺らす。






(こんな時間まで残業する人、私以外にいたんだ)






その事実に驚きながら、下に広がる景色に、ひゅ、と喉が鳴った。









「他人が生きようが死のうが心底どうだっていい。それが正解だとも不正解だとも私は思いません…、けれど」

「……、」

「貴方は今死ぬべき人間じゃありません」

「……どうだっていいのに、ですか？」

「そうです」









死んでしまおうと思った。

汚い人間ばかりいるこの世界で生きていくのは、あまりに苦しい。





こんな会社で働く自分にも、嘘を吐いて金を巻き上げる自分にも、利益しか考えない上司にも。

＿＿＿＿＿反吐が出る。






お金が欲しい。それは人間として当然の欲。

やりがいとか生きがいとか、そんなのは別に必要ないと思っていた。






だけど、気付いてしまった。

私には生きている意味がないことに。






何を言われたって何をされたって、ヘラヘラ笑って他人のご機嫌取りを繰り返す毎日。

大した才能もないくせに、それを人のせいにしようとする自分自身にウンザリする。







(＿＿＿＿＿私って、空っぽだ)








だからせめて、仕事を押し付けて帰る同期やセクハラしか頭にない上司、こんなバカみたいな会社に嫌がらせがしたくて。

死んでやろうと思った。








そうすることでしか、無限にも思える苦しみから救われないような気がしていた。









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