愛もクソです。【七海建人】

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んじゃ、僕忙しいから行くね、とおそらく気を遣って帰っていった五条先輩。

彼は気が利くのだ。意外と。







静かな時間が流れる。

決して気まずくなんてない、絶妙に心地の良い静寂。








ぽつり、とそれを破ったのは、建人さんで。









「遠くへ行きませんか」

「……え？」

「遠く離れた場所で二人暮らすのも、悪くないでしょう」

「…もちろん」









だけど、と言葉を紡ぐ。

私は貴方の妻だから。

彼が何を思っているか、手に取るように分かる。









「ここに残る選択肢もありますよ」

「……、」









私の言葉が意外だったのか、彼の瞳は僅かに見開かれて。

泣きながら彼が呪術師になることに反対したのは私だ。

その反応は当然だと思う。









「……しかし私は、もう左目が、」

「何も任務をこなすことだけが呪術師じゃないでしょう。…虎杖くんたちのこと、気になるんじゃないですか？」

「……、」

「…いいんですよ、建人さん。私は貴方の隣にいられたらそれだけで充分幸せです」

「…Aさん、」









なんとも言えないような顔で見つめられて、数秒。

私が笑うと、彼も目を細めて小さく笑った。









「貴方には、敵いませんね」









ありがとうございます、と呟いた彼の表情は、どこか晴れ晴れとしていた。









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