偽王子86 ページ6
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「…っそういえば、岸も大好きな人いるって言ってたよね?
どうして報われないって思うの?」
下を向いていた視線が私の方をチラっと見ると、岸は小さくため息をついた。
「…そいつは、きっと俺のこと男だって思ってないしさ。
俺はどちらかと言うと、そいつと楽しんでたいから告らねーの。
フラれて気まずくなるとか、マジ無理だし!」
がははっといつものように笑いだす。
そんな岸が、なんだかちょっと心配だ。
「そっかー…
なんか今なら岸の気持ちすごく分かる。
でも、辛くないの…?」
「辛いも何も、勝手に好きになったのは俺だし。
全部俺の責任だろ、笑」
「そっか…
岸って、私なんかよりもずっと大人かも。恋愛に関しては、笑」
「まあ、お前よりはな。笑
…で、お前はその人とどうなりたいの?」
「どうって…言われても…
私、勇気が持てないの。好きになったり、恋をしたり。」
「どうして?」
「きっと、傷つくのが怖いから。」
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そっか、私傷つきたくないんだ。
勇気がないんじゃなくて、ただ単に臆病なんだ。
それは、偽王子への服従が臆病につながる恐怖心を掻き立てるからだろうか。
でも圧倒的な理由は、結果が目に見えているから。
偽王子にとって、私は召使い。
それ以上はないし、恋愛対象になんかなれないってそう思う。
恋したいくせに、傷つきたくないって…
ただのワガママ女だ、私。
.
「それに、上手く行くはずがないんだよ…
だから私の体が自分を守ろうとしてる。」
「でも、恋して、好きになりたいんじゃねーの?」
「こんな私でも、なれるかなあ…?」
ぽろっと魂が抜けたような言葉を吐いたら、
岸がその大きな手のひらを、私の頭の上に持ってきた。
「俺だって恋してるし好きな奴いるんだぞ?
なんでAにできねえんだよ、笑」
岸の優しくてあたたかい眼差しと言葉が、
へんに私の心臓を高鳴らせた。
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*咲七波*(プロフ) - あこさん» 一気に読んでくださったなんて…すごく嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2018年5月25日 12時) (レス) id: 3d58baab0f (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 読み始めたら止まらなくて一気に読み終わりました。続き楽しみにしてますね。黒崎くんを思い出しながらドキドキしてます。 (2018年5月25日 10時) (レス) id: b6d97b5401 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2017年1月10日 18時) (レス) id: b3fcb88642 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*咲七波* | 作成日時:2017年1月1日 4時