偽王子101 ページ21
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「…あ?」
不機嫌そうに、メガネの奥の瞳が私を見つめる。
「そういえば、さ。
召使いの更新儀式?みたいなのって、しなくていいんですか…?」
ああ、私。どうかしてるよ。
もう、下心丸出し。
「お前は見るからに忠実な下部だから必要ないだろ。
別に。」
さらっとそう答えて、
視線をまたワークに戻す。
「第一に、お前が嫌がらない方法で誓いをしてもなんの忠誠心も証明できない。」
氷みたいに冷たいその言葉が、
私の心を一思いに貫く。
「…そっか、ならよかった!
私もあんなキス、二度と…二度としたくないもん。」
目の前の原子記号が、
ぐちゃぐちゃになって、震えてる。
見えない壁を押し付けられているような。
こっちに来るなとくぎを打たれているような。
そうとしか聞き取れない言葉に、涙を堪えることしかできない。
私が今、彼の家にいて、勉強して、ご飯を作れるのは、
召使いだからだ。
召使いじゃなかったら、全部、ないんだもんね。
そういう現実を、叩きつけられた。
どこかでは分かってはいたけれど、
こんなにもはやく、はっきりと。
召使いを克服できたとしても、
中島くんとの関係がなくなってしまうなら。
何の意味もないじゃん。
「…二度と、したくない?って言ったか?」
「…うん。二度とね。
あんな、最悪な。意地悪な、キス。」
吐き捨てるように言うと、グワンッと頭が大きく揺れて、
左のサイドテールが引っ張られる。
「痛い!!放してくださいっ!!」
そう叫ぶと、すんなりとその手を放した。
それを不思議に思った隙に、次は一気にネクタイを引っ張られる。
右手、左手、と交互に引っ張られて、
少しずつ、偽王子に近づいていく。
そのたびに、心臓の音が大きくなっていく。
もう、報われない恋だって分かり切っているのに。
.
「もう一回、言ってみろ。」
「あ、あんなキス、二度と…」
「…何だ?」
「二度としたくない!!」
「…そうか、なら、もっと最悪なキスしてやる。」
超ド級悪魔の微笑みが、私の心を全てもっていく。
その表情の恐ろしさに、
少し体が痺れて、唾を飲み込んだ。
あなたの唇まで、あと10センチ。
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*咲七波*(プロフ) - あこさん» 一気に読んでくださったなんて…すごく嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2018年5月25日 12時) (レス) id: 3d58baab0f (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 読み始めたら止まらなくて一気に読み終わりました。続き楽しみにしてますね。黒崎くんを思い出しながらドキドキしてます。 (2018年5月25日 10時) (レス) id: b6d97b5401 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2017年1月10日 18時) (レス) id: b3fcb88642 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*咲七波* | 作成日時:2017年1月1日 4時