偽王子の召使い

偽王子１９ ページ19

.｡☆。.





…もう！！やけくそだ！！！！





偽王子の肩に手を置いて、



少し背伸びをして、





ほんのり赤いその唇に、視線を移す。






ぎゅっと目を瞑って、１秒。




１秒だけの、キスをした。







偽王子はほのかにバラの香りがして、触れる肌は何だが羽みたいに優しい。



刺々した１面を知ってるからこそ、なんだか愛おしく思えて。






私、どうしちゃったんだろう。





誓いのキス、思った以上に効果があるのかもしれない。







恐ろしい契約。





恐ろしい魔法。



こんな、はずじゃないのに。





「…お前にしては、上出来だな。」



さっきまで私の口に密着していた唇は、もう私の耳に移動していた。



「きゃっ…！！？」



カプリと私の耳たぶを甘噛みすると、意地悪に笑う偽王子。



「用はこれで終わりだ、下がれ。」








初めての契約のキスと、やっぱり同じ気持ちになる。



偽王子の唇は、なんだか切なくて、どこまでも優しい。






１秒でそれを感じ取れるほど。








だからこそ、少しずつ、

気が付かないうちに、服従されていっちゃうのかな…




見えない偽王子との鎖は、すでに彼の手から私の首へと、




しっかりと結ばれてしまっているのかもしれない。









「…失礼しました。」






.｡☆。.

偽王子２０→←偽王子１８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す