16 ページ16
.
「…ッ、」
目を覚ますと、白い天井が夕焼け色に反射していた。
何も考えずに身体を起こすと、思った以上にスッキリとしている。
段々と思考と視界がはっきりとしてきて思い出す。
「平野くん…？」
私の隣に寝ていたはずの平野くんは、もうそこにはいなくて。
心が分かりやすく、重苦しくなる。
こんな感情初めてだから、必要以上に不安になってしまう。
どうしていなくなってしまったのか、私が考えたところで分かる訳も無い事を思いながら、平野くんが寝ていたであろう当たりのベッドにもう一度うつ伏せになって、所謂残り香を探した。
「…平野くん、」
確かに、あの印象深い爽やかで優しい香りが残っている。
夢じゃなかったと分かっただけで、こんなにも心が落ち着くなんて。
ここ数日でどれだけ私は変わったのだろう。
俗に言う、女らしさを取り戻しているのか。いや、そもそも持ち得てなかった女らしさを手に入れたのか。確かなことは分からないけれど、自分が変わったことは明らかだ。
平野くんからの連絡は一切なくて、どこに行ったのかも分からない。
まあ、特に詮索する必要も、権利も無い気がしたので。
私はそれ以上思い悩むことをやめた。
その代わりに、私はネームノートに手を伸ばしペンを握った。
忘れないように、廃れないように、変わらないように、丁寧に。
心の中にある何かを、目の前の紙に残したい。
無駄なことなんて何にもない。今の私には、全てが大切で。
全部が何かのきっかけになると思うから。
特別な女の子じゃなくていい。特別なお話じゃなくていい。
でも、輝いてて優しくて温かい。
強いインパクトよりも、強い臨場感と生々しさ。
私が見たものと、感じたことは絶対に役に立つ。
だから自分をひたすらに信じて筆を進めてく。
平野くんから教えてもらった感情をどうしたら上手く画に乗せられるか。
ヒロインの表情とか、空気の流れ方とか、光の入り方とか。
自分が感じたからこそ、いつも見ていた世界がどうやって自分に映って変わっていくのか、ちゃんと覚えてる。きっとそれが上手く表現できれば、きっと誰かに伝わって。
誰かの心を動かしてくれると信じてる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 837人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
*咲七波*(プロフ) - Anzu1134さん» コメントありがとうございます！ゆっくりではありますが引き続き読んでくださると嬉しいです！笑 (2019年10月19日 6時) (
レス) id: 3d58baab0f (このIDを非表示/違反報告)
Anzu1134(プロフ) - 更新とても楽しみにしています！ 頑張ってください！ なるべく早めに更新してくれるとありがたいです。 (2019年9月30日 1時) (レス) id: 68bfd8b6e0 (このIDを非表示/違反報告)
*咲七波*(プロフ) - あちゅぴさん» コメントありがとうございます！これからも読んでくださると嬉しいです〜！ (2019年9月14日 11時) (レス) id: 3d58baab0f (このIDを非表示/違反報告)
あちゅぴ(プロフ) - このお話とても面白いです！！続きも楽しみにしていますね！ (2019年9月13日 18時) (レス) id: 9024cefd53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：*咲七波*
| 作成日時：2019年8月23日 10時
