-κ- ページ34
*・。
支度が終わったAちゃんの手を握って、少し強引に引っ張る。
まだまだAちゃんとの距離がある分、
気が付いたら他の誰かとくっついちゃうんじゃないかって。
そう思ったら、今すぐにでも2人きりになりたくて。
.
「岸くん、歩くのが速いです。」
「あっ…、ごめん…!」
本当に俺、何やってんだ。
情けねええ…
頭を冷やして、君の手を離した。
「部活で何かあったんですか?帰りも早かったですし。」
「いやいやっ、部活では何にもないよ!本当に!!」
「そうですか、ならよかったです。」
「うん…、ごめんね。」
ごめん。俺のせいでいらない心配させちゃって。
「何がですか?」
「あ…、いや。まだやることあったのに、むりやり帰らせちゃって。」
「気にしないでください。明日やればいいだけです。」
「ありがとう。」
「いえ。」
.
あんなワンシーンひとつで、俺は気持ちをかき乱されるのに。
Aちゃんには、きっと一生伝わらない想い。
俺が子供過ぎるのは分かってる。だけど、そう思えば思うほど。
俺の中に、醜い何かがふつふつと湧いてくるんだ。
俺よりも少し背の低いAちゃんを見下ろす。
肌が白くて、透き通ってて。いつか、俺の目の前からすっと消えてしまうんじゃないかって。
そう思えてしまうほど。
君に見とれていたら、Aちゃんも俺を見上げる。
なんだか、何かを言いたそうな。そんな感じで。
「…な、何?どうしたの?」
「…」
「Aちゃん?」
「いえ、何でもないです。」
「そっか…?」
言いたいことは何でも言うAちゃんが、秘めてしまった言葉って一体何だったんだろう。
やっぱり、君との距離は遠いね。
.
今、Aちゃんの隣にいられて幸せなのに。
幸せだからこそ、願望が大きくなっていく。
少しでも近づいていたいから。
俺はもう一度、Aちゃんの左手を握った。
俺は、ここにいるから。
誰よりも、大好きだからって。
ちゃんと言葉にできたら、もっとAちゃんに寄り添えるのに。
せっかく早い時間に帰宅してるのに。
.
ねえ、Aちゃん。
君には、俺がどんな風に映ってるの?
…なんて、やっぱり言えるわけないけど。
*・。
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*咲七波*(プロフ) - 夜木さん» 夜木さん!コメントありがとうございます泣 キュンキュンさせることが出来て嬉しいです!最後まで読んで下さってありがとうございました! (2020年12月25日 13時) (レス) id: 1b45d9b579 (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - とても今更なのですが一気に読ませて頂きました。2人ともピュアでかわいくて読んでいてキュンキュンしっぱなしでした。素敵な作品をありがとうございます!! (2020年11月21日 22時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - うわ、なんか読みながら泣いちゃってたわ …この話、泣く要素なさそうと思って読み始めたのに不覚やった笑 私は好きだよって言ったら、その好きは俺が言う好きと意味が違う!!って言われたんやけど( ノД`)… (2018年12月30日 1時) (携帯から) (レス) id: 075c6f1d28 (このIDを非表示/違反報告)
☆燐★(プロフ) - *咲七波*さん» はい!即刻お気にです! (2018年9月24日 21時) (レス) id: 059af8cb76 (このIDを非表示/違反報告)
*咲七波*(プロフ) - ☆燐★さん» コメントありがとうございます!感動と涙を届けられてすごい嬉しいです!涙 続編もぜひ!笑 (2018年9月24日 21時) (レス) id: 3d58baab0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*咲七波* | 作成日時:2018年8月18日 16時