初恋の行方 ーyb×inー

乙女の葛藤 １ ページ6

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　その人を初めて見たのは、中二の夏休みだった。

　退屈しのぎに観ていたドラマの中でその人は主人公の息子さんのお友達、って役を演じていて、映ってたのはすごく短い時間だったんだけど、でも一番印象に残った。


　それから私はその人の出ているドラマや映画を探した。

　まだ無名だったから大変かと思ったけど幸い早いうちにブログが見付かって、そこに出演予定が書いてあったから録画予約して一生懸命観た。


　そうしてるうちにその人はだんだん人気が出て、どのドラマでも映画でも主役や、脇でも重要な役を演じるようになっていく。
　それが嬉しくてたまらなくて、友達に自慢した。

　そしたら友達がその人の良く行くお店、っていうのを探し出してくれて、だけどお酒を出すお店だから行けないって落ち込んでいたらお母さんが『特別に』って許してくれて、そしてやっと今日会えたんだけど…




「すっげ…かわい…」



　そう言って、憧れの人は至近距離で私を見つめてる。

　恥ずかしくて逃げ出してしまいたいけど、手を握られてどうにもできない。




「あの…」



　離してください。

　そう言えばいいのかもしれないけど握手してるのは嬉しいし…どうしよう…


　困っていたら、急に知らない声がした。




「ちょ…藪、何してんの？こんなとこでナンパ？」

「は！？ちげーよ！」



　聞こえた声は店長さんのもので、藪さんと親しそうな感じに見えるから、お友達…なのかなぁ…

　だからここによく来てるんだ…




「違うならその手離してあげな。困ってるよ、その子。」

「っ！す、すまん！」




　藪さんの友達とかうらやましいなぁ…
　
　なんて考えてたら、パッ、て手が離れて、だけどまだこっち見てる。

　恥ずかしい…
　もう帰りたいよぉ…




「あ、あのよっ…このあと時間あるか？」

「え？」

「や、これじゃホントにナンパだな…っ、くそ、そうじゃなくてあの…」

「藪さん…？」



　ドラマの宣伝や映画の公開記念で話す時とぜんぜんしゃべり方が違うんだけど…

　え？
　どうなってるの…？




「と、とにかくっ！もう少し話したいんだ！時間無いかっ？」

「え、と…少しなら…」

「なら場所替えて、話しっ…」

「と、友達と相談してきます…」






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