初恋の行方 ーyb×inー

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「宏ってのは空っぽの枠だ。大きくて広い空っぽの枠に宏太の太で大きなものを蓄えろ、って意味だな。」

「蓄えるって…お金ですか？」

「また俗な事を…そうじゃなく、人生を豊かにしろ、だよ。色んな経験を積んで育て、って願いがこもってる。」

「なるほど…で、積めてます？」

「まだ人生途中だからなんとも言えないな。けど今日また俺は経験を積めた。」

「今日？それって俺たちと話してることですか？」

「ご名答。このトシになると新しい友人は作りにくいからな。」

「友達？俺たちが？」

「ダメか？君たちにとっても俺みたいなやつは珍しいだろうから、経験になるだろ？」




　『友達』
　このワードはとても便利だ。

　友達だから◯◯してあげる、なんてのが無条件に通用したりする。
　特に若いうち、と言うか、学生のうちは、な。




「まぁ…友達、なら…」

「だろ？何事も経験だし、俺と友達にならないか？」

「うん！なるなる！」

「ち、知念！そんなあっさり答えるな！」

「いいじゃん！涼介も藪さんみたいなタイプ実は嫌いじゃないでしょ？」

「そりゃ…思ってたよりいい人かな、とは思うけど…」

「じゃあいいじゃーん。ね？いのちゃんもいいよね？」




　ナイスフォローだ知念ちゃん！

　全く会話にのってきてくれないいのおけいちゃんをどうしたら引っ張り込めるのか悩んでたんだよなぁ。




「私は…その、どちらでも…」

「それなら是非友達になってくれよ。それで？いのおけいってのはどんな字を書くんだ？」

「えっと…伊能忠敬の伊野にしっぽの尾で伊野尾…名前の慧は彗星の彗に心、です…」

「慧？じゃあ伊野尾ちゃん頭いいだろ。」

「えっ？なんでわかるの藪さん！いのちゃん学年一位なの！」

「慧は仏教で言うところの“真理を見抜く力”って意味なんだ。賢い、とか、敏い、って意味もあって…」

「そんな…あの、誉めすぎです…」




　うし。
　会話に参加できたせいか顔もあげてくれたぞ。

　いい流れだ。



「誉めすぎじゃ無い。伊野尾ちゃんは礼儀正しくて賢くて、素敵な子だと思うぞ。」

「いえ…だからあの…」

「少なくともさっき声かけてくれたとき、すごく好印象だった。光のとこにも迷惑かけないように…って親御さんの許可ももらってくれたんだろ？ありがとな。」

「それはその…藪さんのお気に入りのお店だし…」






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