初恋の行方 ーyb×inー

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　最終的に三人は(ちねんちゃん先導で)店で一番高いステーキのコースを選び、俺も同じものを頼んだ。


　シンクロニティ、って心理学用語がある。

　同じものを食べたり同じような行動を取ることで気持ちもシンクロした気分になって親しくなるって意味なんだが、当然ながらそれを狙っての行動だ。




「ところでさ、やまだりょうすけ、ってどんな字書くんだ？あ、肉旨いな。」

「登る山に田んぼの田。涼しい涼に自己紹介の介です。美味しいですね。」

「ちねんちゃんは？」

「知識の知に念じる念。にんべんの右側に有り無しの有で侑。李は木を書いてその下に子供の子。」

「それで侑李、か…へぇ、ずいぶん凝った名前だなぁ。あ、このソース旨いぞ。使うか？」

「ありがとうございます。使います。ところですいませんね。山田はシンプルで。」

「苗字は有りがちだけど涼介はシンプルじゃ無いだろ。」

「そうですか？」

「涼は『リョウ』とも読むけど名前の下につくと『スケ』とも読んで、人を助けるって意味になる。」

「すけ？そんな読み方あるんですか？」

「最近は無いな。でも昔の日本ではよく使われてた。『介』の方も同じ意味だし、人を助ける優しい人になって欲しかったんだな、ご両親は。」

「へぇ！藪さんすごい！物知りぃ！」

「こんなの雑学だよ、たいしたことないって。それよりすごいのは山田くんのご両親だ。名前の通りの優しい男に育ってる。自慢の息子だろうな。」

「優しい…ですか？」

「女の子二人のナイトしてるじゃないか。なかなかできることじゃないと思うよ。」

「そんなことは…」

「ふふっ、そーなんだよー。涼介ってばいつも僕たちをかばってくれるの。」

「やっぱりか。すごいなぁ。山田くんいいやつっぽいもんな。」




　誉めちぎるのも作戦のひとつ。

　単純に『優しいんだな』と誉めるより、こうして名前やらなんやら理屈をつけて誉める方が効果は高い。
　しかもさりげなく両親のことも誉められて、これで悪い気分になるやつはいないだろう。




「藪さんの『宏太』にはどんな意味があるんですか？」




　お。来たな。

　俺の事なんか全く知りたくなかっただろうに、話の流れで興味ある感じになってる。

　ここでうまいことやれば…




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