snow white〜第６章〜(inoo kei)

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そんな複雑に揺れる心を抱えた
王さまのもとへ
姫に手を引かれた王子がやって来ます





「………お前が、ひかるか。」





自分ではない男と繋がれた
姫の白い指先を見たくなくて
王さまの視線はまっすぐ王子に向けられます

悔しさと憤りを含んだ眼差しに
王子の緊張は否応なしに高まりました





「八乙女光です。
はじめまして、お義父さん。」




殴られてもなんでも
とにかくいのちゃんは返さないぞ！

お義父さんに俺たちのこと
絶対認めてもらうんだ！


腹筋に力を入れて覚悟を決めたとき
意外なことに王さまが笑いました





「お義父さん、は勘弁してくれ。
俺は藪宏太。藪でいいぞ。」

「へっ？あ、すみません！
えーと、そしたら藪さん…でいいですか？」

「さん、とかいらねぇ。藪でいい。
その代わりお前のことも
光くんとか言わねぇからな。」

「も、もちろんです！
ありがとうございます！藪さん！」

「だーから“さん”いらねぇ。
ついでにそのかしこまった喋りもよせ。」

「え、えっと…
じゃあその…よろしく、藪。」




友好的に握手を求められて
どーなってんの？と思いながら
王子がそれに応じた、その時です





「わっ！？うぐっ！！」





出した右の手首を掴まえられ
バランスを崩した王子のお腹に
王さまの左拳がめり込みます

おもっくそ、力一杯のボディーブローです





「悪ぃな。俺は左利きなんだ。」

「そ、そーですか…」




答えた王子は涙目ですが
その横で目を真ん丸にしてるのは白雪姫

だってどうして王さまが
王子のことを殴ったのかわからないからです





「とおさま！
なんでひかるをぶったの！！」

「ん？まぁこれはそりゃ
娘をとられた父親のお約束だな。」

「お約束ってなに！？
それに取られてないよっ！」

「んー？だってお前は
こいつのもんになったんだろ？」




言われて姫は首をかしげます





「ひかるのもん、ってなに？」





残酷な問いだな…と王さまは思います

けどいっそのこと
ここではっきり聞いておいた方が
いいのかもしれない

俺の目の前で腹を押さえて呻いてる
小憎たらしいくそガキを愛したと
白雪の口から、はっきりと






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