snow white〜第６章〜(inoo kei)

02 ページ17

・





小さな白い花束は
その日のうちに王さまの手元を離れ
二日の後にシュプーデルに届きます

馬車を使えば
どんなに急いでも四日以上の道のりですが
早馬を使えばその半分で済むのです




「いのちゃん！
お義父さんからお手紙だよ！」




王子が姫に手渡した花束は
特別な魔法をかけられてまだみずみずしく
花びらひとつ欠けていません

それに添えられた手紙には
結婚を祝う言葉と姫の無事を喜ぶ言葉が
短く書かれていました





愛する白雪へ


イタズラ小娘
心配ばかりかけやがって
お前のせいで心臓がいくつあっても
足りやしねぇぞ

けど無事でよかった
おまけに結婚までしてるとか
二重にめでたいな

花嫁姿を見逃したのは残念だが
披露宴での晴れ姿を楽しみにしてる

それと、お前の“ひかる”に
首を洗って待ってろ、って伝えておけ


心配性のとおさまより




「………だって！
とおさま心配性なんだ〜、ふふっ。」




手紙を読み上げて笑顔の姫とは正反対に
王子の顔はひきつっています

ま、無理もありませんけどね




「お花もキレイ〜！あ、カードついてる！
えーと、“ひめさまおめでとう、梨花”
………って、梨花ってだれ？」

「知らないひとなの？」

「うん、たぶん。
でもキレイだからいっか。」




姫はスキップしながら
お花を活ける花瓶を探しに行きました

残された王子は
王さまからの手紙を読み返します




「心配性のとおさまより、か…」




白雪姫は
容姿もさることながら
心映えが素晴らしいです

純粋さと優しさのいっぱい詰まった
あの心があるからこそ
姫は誰よりも美しく愛らしいのです


そしてその姫を育てたのは
この手紙を書いたひと

たぶん、世界で唯一
俺と張り合えるぐらい
いのちゃんのことを愛してるひと




「首切られるのはパスだけど
何発か殴られるのは…仕方ないかな…」





ふ、と笑ったその時に
白い花を活けた花瓶を抱えた姫が
覚束ない足取りで戻ってきました





「おっ、もっ、いぃ〜っ！」

「わっ！ちょ！
俺が運ぶからほらっ！」





大事にしよう

心配性のとおさまに愛されて育まれた
世界で１番綺麗なひとを




「ありがと、ひかる。」

「どういたしまして、それと…」





愛してるよ、と
艶々ほっぺにキスを贈った王子に
姫はニッコリと
愛らしい笑顔を返したのでした






・

愛しき人よ 01→←白い花束をキミに 01

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す