snow white〜第５章〜(inoo kei)

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「ちょ、ちょっと待って
これひとまず落ち着こうよ、うん。」




腰を抜かすほど驚きましたし
動揺もしましたが
さすがは次期将軍

あわてふためいていても何も解決しないと
胸を押さえて深呼吸します


スーハースーハー


何度か息を吸って吐いて呼吸を整え
少しは冷えた頭を働かせます




姫が生きてるのは間違いない

おそらくこれは
姫の義理の母親である
あの魔法の国のなにかの力だろう

一国の姫にも関わらず
森に隠すように建てられた
粗末な小屋に住んでいたこと

それにあちらの国には
正妃懐妊の噂もあったよな、確か…





「なるほど…
つまりは邪魔になったから追い出して
さらに後腐れ無いようにした…わけか…」





呟く裕翔くんの脳内では
陰謀渦巻く展開が描き出されています




長く跡取りに恵まれなかった王国の后が
ようやく授かった赤ん坊

国は快挙に湧いているはず


ですが后には
なさぬ仲の娘がおり
その娘は国民からも王からも愛されています

自分が身籠った子供が男児ならよし

男の子として産まれれば
間違いなく国を継ぐのは自分の息子

けれどこの子が姫ならば…
先の后が残した第一王女が婿をとり
王位はその婿が継いでしまいます


そうなれば私の子供は…


そう考え
后は王に甘言し
姫を城から追い出した末に毒を盛った

命まで奪わなかったのは
これまで共に暮らした姫への哀れみか
それとも微かにあった
罪の意識がそうさせたのかもしれない


どちらにせよ
あわれな姫は薬によって未来を絶たれ
光くんが妻にと望まなければ
人々の記憶から消えていたんだ…




「そんな女性(ひと)には見えなかったのに…」




はぁ、と息をついた裕翔くんは
あのお妃さまがまだ嫁ぐ前の
少女の頃を知っていました

王宮で開かれた晩餐会に招待された王子に
供として付き従った時垣間見た人は
あんなに美しくて可愛らしかったのに…



密かな憧れを抱いていた女性の
思わぬ黒さを知ってしまった…

と、少しがっかりな裕翔くん

でもそれ誤解だからね
と教えてくれる人もなく
肩を落として姫を見ます





「綺麗な薔薇にはトゲがある…って言うし…
女のひとって怖いって
前に高木くんも言ってたもんね…」





可哀想に…

とか、同情たっぷりに姫を見てるけど
裕翔くん…

それ勘違いですからねー！





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