JUMP短編集〜十人十色の恋レシピ ６〜

いとこの慧お兄さんと 10/13更新 ページ32

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　『天高く馬肥ゆる秋』なーんて言葉もあるように、秋の空は澄み渡って遠い。
　薄くかかったうろこ雲も遠くて、あそこに手を突っ込んでかき混ぜてみたいなぁ…とか思いながら見上げてると、家の前に車が停まった。



「よお、受験生！なにボケーっと空見上げてんの？」



　車を降りて手を振ったのは、いとこの慧にぃ。
　甘いマスクに高身長、おまけに高学歴と、何もかもを兼ね備えてる無敵の大学生だ。



「あ！慧にぃお帰りぃ！台湾どーだったー？」

「おっ？元気じゃーん。朝っぱらから黄昏てるから心配したけどへーきそうだな。」



　ニヤッとしてから“開けて”って合図するから、急いで玄関に向かった。
　扉を開けるとあたしを眺めて、頭をポフポフする。



「一週間ぶりだね。大きくなって…」

「このトシになって一週間でめざましい成長したら怖いでしょ！なんも変わってないわよ！」

「ん？そう？あ〜、よく見たらなんにも変わってないや〜。」



　相変わらずのテキトー節である。

　この人はとっても賢いその頭脳を、あたしといるときはあたしをからかうためだけに使う。




「で？俺が日本を離れてる間、しっかりオベンキョしてたのかなぁ？」

「うっ…そ、それは…」

「おやおやその返事はなんなのかなぁ？俺は約束通りお土産買ってきたぞぉ？」

「けぇにぃ〜っ。」




　恨みがましく見上げると、またポフポフ頭を撫でられてそれからくしゃくしゃされる。



「慧にぃが来るから朝からヘアアイロンと格闘して整えたのに、そんな乙女心は丸無視かいっ！」

「可愛いこと言ってもおにーさんは騙されません。受験勉強頑張るからお土産買って来い、って言ってたのAだぞ？」

「はう！実にその通りだけどさりげなく交ぜこんだ乙女心の行方は！？」

「お前のは乙女心じゃなくてシタゴコロだろ？パイナップルケーキとマンゴープリンがしこたま食いたくて言ってるだけして…そんなん本気に受け取るほどこっちはガキじゃねーの。」



　ペンッとでこぴんされておでこを押さえると、慧にぃは楽しそうに笑ってから靴を脱いだ。



「おっじゃまっしま〜す。」



　スタスタ上がってく背中を見送って、あたしはこっそりため息をつく。

　ちっちゃい頃から妹扱いされてるから素直に言えないけど…


　さりげに交ぜた乙女心は…
　ちゃんと本物なんだけどなぁ…





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