Puppy Boo〜kouta.Y〜

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「アメリカ出向、おめでとうございます！」



周りから拍手が沸き起こり
花束を受け取った俺は
少々気恥ずかしい





「わが社の最年少記録ですよ！」


「入社五年で、なんて…すごい！」





称賛の声が心地好い



某有名大学をトップの成績で卒業し
世界規模で業務展開してる
大手メーカーに就職

エリート街道をばく進してる俺は
来月からアメリカ支社に出向が決まった


これはわが社のエリートなら
誰もが通る道…って訳でもなく
エリート中のエリートしか通れない
特別な『出世への最短ルート』だ

帰ってくれば間違いなく
『未来の役員』の札のついた
ポストが用意されている





「おい、東條。」





取り囲む同僚を掻き分けて
俺は一人の女子社員に声をかけた





「俺が居なくなってもサボるなよ。
戻って来たらこきつかってやるから
せいぜい使えるよーになっとけ。」


「もぉ！藪課長ったら相変わらずですね！」





入社一年目のハタチの小娘

入ってきたころはオドオドしていたが
半年も経てば生意気になる





「課長が戻ってくる頃には
あたしはここにいないかもですよ？」


「あ？なんじゃそりゃ。
寿退社宣言か？」


「ちがーいますよっ！
『総合職』として、バリバリ他部署で
働いてるかも…ってことです！」


「くっ…ははは！
そーか、まぁ頑張ってみろ。」





一般事務員として入社して
仕事が面白くなって総合職を目指す

そんな女は掃いて捨てるほどいるが
それをかなえるやつはごくわずかだ


倍率300倍とも言われる狭き門

こいつに…くぐり抜けられるか…





「帰って来るのは四年か、五年後だ。
そんとき名刺もらうの楽しみにしてるぜ。」


「はいっ！いってらっしゃい！」





笑顔で手を振る部下たちを残し
俺はアメリカへと旅立った






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