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＿それから急いで戻って、私は正午を過ぎた頃に雷門中学に到着した。
『よかった、間に合った……！』
とりあえず試合が行われるグラウンドに行ってみると、既に何人かがベンチに座っていた。
学校内も、いつもの休日より心なしか人が多い気がする。
……まあ、なんだかんだ言って皆今日の試合に注目しているのだろう。
『……一郎太、どこにいるかな』
私はトロフィーを見せる為、さらに差し入れも渡したくて、荷物を置いて真っ先に一郎太を探す。
どこにも姿がないのでサッカー部の部室を覗いたところ、案の定、見慣れないユニホーム姿の一郎太の姿があった。
サッカー部にはまだ知らない人も多いので一瞬迷ったけど、私はできるだけ控えめに、そっと扉を引く。
『こ、こんにちは……』
「……A？」
初めに声を上げたのは……やはり、一郎太。
早く気づいてもらえて良かった、私はそう心の中で呟く。
一郎太は、すぐにこちらに駆け寄ってきてくれた。
「A！なんだ、わざわざ来てくれたのか？……大会はどうだった？」
『……ふふふ』
何よりも真っ先にそう尋ねた彼に、私は少しだけ笑いながら 手元のトロフィーを掲げてみせる。
一郎太は一瞬驚いたように眼を見開いたけれど、すぐに察したようで、満面の笑顔を浮かべた。
「凄いじゃないか。やったな、A！おめでとう！」
『うんっ！』
……よかった、一郎太に一番に見せたかったから。
嬉しくて思わずトロフィーを撫でれば、続いて部室の中から同じクラスの円堂君と秋ちゃんが出て来る。
「おっ、やっぱり！颯田じゃないか！」
「Aちゃん、大会お疲れ様！」
『あっ、二人とも！ありがとう！』
私の手元のトロフィーを見た円堂君はうわあっと大声を上げてびっくりしてくれた。
秋ちゃんも円堂君も本当に上手に褒めてくれるから、私も思わずニコニコしてしまう。
「すっげえ、陸部の颯田Aじゃん」
「マジかよ」
他の皆もどんどん出てきて私は若干狼狽えつつ、持ってきた差し入れのカバンを一郎太に差し出した。
『これ、差し入れ！凄くたくさんあるから、良かったらサッカー部のみんなで食べちゃって』
続く
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年3月24日 22時
