１９２ 何かが ページ8
『……、』
扉の陰で、一度皆の様子を伺う。
ちょうど話のきりが良くなったところで私は意を決し、車椅子の車輪を押した。
.
.
.
風丸side
「源……！？」
ミーティングの終盤＿
突然、何の前触れも無く現れたその姿を前に、俺たちはあっと声を上げる。
ちょうど今日、練習が終わったら見舞いに行ってみよう、そう話していた矢先の事だった。
『お久しぶり、です』
源はぎこちなく車椅子を進めると監督とコーチに会釈し、続いて俺達に向かって深く頭を下げた。
「源……」
俺は今すぐにでも話したい気持ちを抑え、座ったままその様子を伺う。
数日ぶりに会った源は、見慣れない車椅子に座り、表情は硬く、少し痩せたようにも見えたが……その動いている姿を見て、俺はほっと胸を撫で下ろした。
「……っ、Aさん！！」
もう我慢できない、そう言わんばかりの形相で、一星が席を立って、源の元に向かう。
『光くん』
「Aさん、良かった……本当に……」
僅かながら涙を流す一星に、源は驚いたように目を見開いた。
それを皮切りに、呆然としていた一同も、1人、また1人と後を追って、あっという間に源を取り囲む。
俺も続いて、源の近くへ行った。
「源！」
「Aちゃん！もう大丈夫なの？」
『皆さん……』
源は呆然としたように俺達を見回し、一度ゆっくりと目を閉じる。
そして次の瞬間、いつも通りの笑顔を浮かべた。
『心配かけちゃってごめんなさい。でももう、本当に大丈夫なんです！』
「大丈夫って、でも……」
＿余命半年。
そんな事実を知っているからか心配そうな表情を浮かべる一星、続いて野坂が源に駆け寄る。
その後もメンバーそれぞれが声を掛けていたものの、源はただ、ずっと同じような笑顔で大丈夫を繰り返した。
「源、体調はどうだ」
『あ、風丸さん。すごく元気なんです、今』
元気＿
普通なら嬉しい筈のその言葉、そして源の笑顔なのに、俺は何か嫌な予感がしていた。
目の前にいるのは源……それで間違いない筈なのに、何か、引っかかる物がある。
具体的なことは分からないが、倒れる前の源とは確実に何かが違った。
……そう、何か、欠けているような、
『皆さんにお話したいことがあります……いいですか、監督、コーチ』
一通り皆と顔を合わせてから、源は監督の方を向いてそう言い放った。
俺たちは再び席に着いて、源の言葉を待つ。
源は俺たちを見回して、口を開いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 492人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花鈴萌(プロフ) - ayadesuさん» 長い間応援していただきありがとうございます！同い年なんですねめちゃくちゃ嬉しいです……！同世代でイナイレ好きな子が少ないので……これからも頑張りますね！ (3月16日 0時) (
レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ayadesu - この小説ができた頃から応援してます！！私も作者さんと同い年なので勝手に親近感を感じながらも、こんな上手にお話が作れるなんてすごい！と思いながら読んでいます。これからも頑張ってください！ (3月11日 21時) (レス) @page9 id: 108ac644bd (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - ありすさん» 長い間応援して頂いてありがとうございます！大好きといっていただけて本当にありがたいです。これからも頑張っていきますので、完結までよろしくお願い致します！ (3月2日 11時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - いつのまにかめっちゃ進んでてびっくりしてます！！このお話ほんとに大好きなので続きが楽しみです！作者さんのペースで頑張ってください！ (2月27日 14時) (レス) @page3 id: d48b66107c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年2月18日 0時
