２１１ 扉越しの再会 ページ27
「……A、起きてる？」
＿もう、何度目か分からないノック音。
先程から、源のお母さんはずっとこの調子で声をかけ続けている。
しかし、源がいるという扉の向こうからは未だなんの返事も無く、俺はただ呆然と源のお母さんの背後に立ち尽くしていた。
「……もう」
源のお母さんはそう小さく息をつく。
それから暫くして、意を決したように、もう一度扉を叩いた。
「……A、返事をして。お客さんが来てる」
『……だれ？』
お客さん、という言葉が気になったのだろうか。
扉の向こうから漸く聞き馴染みのある源の声が聞こえて、俺は思わず息を呑む。
……間違いない、源の声。
本当に、この扉の向こうに源がいるんだ。
「……。」
思わずその名前を呼びたくなるけれど、俺は黙って事の顛末を見守る。
源のお母さんは俺に目配せをすると、扉に向かって大きな声で言い放った。
「風丸さんが来てる」
＿その次の瞬間、扉の向こうから、ガタガタと大きな音がした。
源のお母さんはやっと動いた、そう呟いてゆっくりとドアの前から後退りする。
一方、扉の向こうからは、源が焦ったような声色で問いかけた。
『……えっ、待って、風丸さんって、』
「言ったけど」
ここで、もう一度源のお母さんは俺に視線を向ける。
どうやら源も、俺が来るとは思ってなかったらしい……いや、知らなかったというのが正しいだろう。
『え、明日、試合で……ちょっとお母さん、追い返して！』
「もうここにいるから無理だよ」
……再び、部屋の中からドンッと大きな音が響いた。
それからまた静かになって、俺は戸惑いつつ源のお母さんの方を向く。
「……よろしくお願いします」
源のお母さんは、源には聞こえない声の大きさでそう俺に頭を下げる。
そしてすぐに、廊下の向こうへ消えていった。
「……。」
俺はそれを見届けてから、目の前の扉にそっと両手をつく。
そして、扉の向こうにいるであろう源に、ゆっくりと語り掛けた。
「……源、俺だ」
.
.
NO side
『……！』
…‥嘘、でしょ。
Aは扉の向こうから聞こえてきた声を聞くやいなや、再び急いでベッドに顔を埋めた。
どうやら、お母さんの話は冗談じゃなかったらしい。
「源……そこに、いるんだよな」
……どうして、どうやって、なんで。
疑問が渦巻いて、頭がぐるぐるする。
風丸の言葉に答える事なく、Aは耳を塞いだ。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←２１０ 広い家
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 492人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花鈴萌(プロフ) - ayadesuさん» 長い間応援していただきありがとうございます！同い年なんですねめちゃくちゃ嬉しいです……！同世代でイナイレ好きな子が少ないので……これからも頑張りますね！ (3月16日 0時) (
レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ayadesu - この小説ができた頃から応援してます！！私も作者さんと同い年なので勝手に親近感を感じながらも、こんな上手にお話が作れるなんてすごい！と思いながら読んでいます。これからも頑張ってください！ (3月11日 21時) (レス) @page9 id: 108ac644bd (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - ありすさん» 長い間応援して頂いてありがとうございます！大好きといっていただけて本当にありがたいです。これからも頑張っていきますので、完結までよろしくお願い致します！ (3月2日 11時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - いつのまにかめっちゃ進んでてびっくりしてます！！このお話ほんとに大好きなので続きが楽しみです！作者さんのペースで頑張ってください！ (2月27日 14時) (レス) @page3 id: d48b66107c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年2月18日 0時
