２０８ 想い ページ24
「……野坂」
まずい。
無意識に出たそんな言葉が、頭を過ぎる。
まだ練習時間なのに私服、そしてバッグまで持って……どう見てもこれから外出する姿だ。
誤魔化すにももう遅いのは明確だった。
「風丸さん、お出かけですか」
「まあな……」
内心でかなり焦る俺に対して、野坂は淡々と尋ねる。
俺は曖昧な返事をして、必死に頭を巡らせた。
……どうする。
言い訳しようにも、相手はあの野坂だ。
しかし源の元へ行くことを果たして話して良いのか分からない。
とりあえず沈黙を破ろうと口を開いた、その時だった。
「野坂、これは」
「行くんですよね」
被せるように、言い放つ野坂。
そこまで気づいていたのか、と俺は口を噤む。
「行くんですよね、Aのところへ」
野坂は念押しをするように、今度は強い口調で繰り返した。
……もう、正直になるしかない。
野坂は最初から気づいていた。だから、俺を追いかけたのだ。
そう考えた俺は、野坂の言葉に首肯した。
「ああ。」
「そうですか」
……思ったよりもあっさりとした、いつもの野坂らしい簡潔な返事。
更に野坂は一度、何かを考えるように視線を落としたが、依然としてその表情は変わらない。
俺は暫くして、ふと野坂に尋ねた。
「……止めないのか？」
野坂が、どんな形といえど源に並々ならぬ思いを抱いているのは俺も気づいている。
それは普段の行動を見ていればなんとなく察しはつくし……アレスを命をかけて終わらせたのも、少なくとも源の為だというところもあったのではないか。
だからこそ野坂は俺の、謂わば源の精神状態を乱してしまう危険もあるような勝手な行動を、止めに来たのだと思った。
そして暫しの沈黙の後、野坂は静かに呟く。
「……止めません。僕には分かるんです。今のAには、あなたが必要だ。」
俺は意外な言葉に驚いて、思わず野坂の顔を見つめる。
その時、初めて先程まで冷静だった野坂が、まるで悔しそうに眉を顰めていることに気づいた。
「……！」
「僕は、Aの事が好きです。誰にも譲りたくない。勿論、風丸さん……あなたにも」
真っ直ぐな想い、ここでの好きの意味が分からない程俺も鈍くはない。
ただ何と返せば良いのか分からず唖然としていれば、野坂は言葉を続けた。
「でも今Aが求めているのは、僕じゃない。……悔しいですけどね」
＿今回は、頼みます。
野坂はそう言って、少し笑った。
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花鈴萌(プロフ) - ayadesuさん» 長い間応援していただきありがとうございます！同い年なんですねめちゃくちゃ嬉しいです……！同世代でイナイレ好きな子が少ないので……これからも頑張りますね！ (3月16日 0時) (
レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ayadesu - この小説ができた頃から応援してます！！私も作者さんと同い年なので勝手に親近感を感じながらも、こんな上手にお話が作れるなんてすごい！と思いながら読んでいます。これからも頑張ってください！ (3月11日 21時) (レス) @page9 id: 108ac644bd (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - ありすさん» 長い間応援して頂いてありがとうございます！大好きといっていただけて本当にありがたいです。これからも頑張っていきますので、完結までよろしくお願い致します！ (3月2日 11時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - いつのまにかめっちゃ進んでてびっくりしてます！！このお話ほんとに大好きなので続きが楽しみです！作者さんのペースで頑張ってください！ (2月27日 14時) (レス) @page3 id: d48b66107c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年2月18日 0時
