２０６ 向き合わないと（加筆修正） ページ22
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「お待たせ」
重い音を立てて開く、車のドア。
……やっと来た。
そうAはため息をつき、スマホの電源を落として無言の圧で母親を見上げる。
自分が車に戻ってきてから30分はかかっていたが、一体何をしていたのか＿
母親はそんな疑念をはらんだ娘の視線に肩をすくめ、運転席に座ってエンジンをかけた。
「ごめん、監督とコーチと話し込んじゃって」
……本当に、それだけなんだろうか。
イナズマジャパンの皆に、なにか言ったりしていないだろうか。
一瞬そんな疑念が浮かんだものの、もう終わったことだ、そうAは首を横に振る。
車が走り出せば、母親は運転をしつつ、横目で娘の様子を伺った。
「A、久しぶりの家ね。何が食べたい？お寿司とか頼もうか」
『……そうだね』
一方、Aは気を紛らわすように、窓の外、その過ぎ去っていく夕暮れの街を眺める。
河口湖を囲むようにして並ぶスポーツショップやスーパーが見えたとき、前に皆で訪れたことを思い出した。
「あ、そういえばこの前ね、久々に神童さんとお会いしたの。拓人くん、もうすぐ4歳になるんだって。パーティーで一度会ったけど、覚えてる？」
『あ、うん……』
母親との会話も上の空で、Aはその景色からゆっくりと目を逸らし、顔を伏せる。
これ以上眺めていれば、道を歩いていた自分、皆に囲まれて笑っていた自分が今も見えるような気がしてしまった。
当たり前だったそんな時間は、もう終わってしまったのに＿
『っ、』
Aは静かに目を閉じ、何度も自分に言い聞かせる。
……これでいいんだ、と。
少しの時間でもいい経験ができて、本当に良かった。
「拓人くん、サッカーも好きみたいよ。今度また家に呼ぼうか」
『……うん』
……ああ、瞼を開けるのが億劫だ。
そう思えば、次第に母親の声が遠くなっていく。
やがて、Aはいつの間にか眠りについた。
.
「あら、寝ちゃったか」
瞳を閉じて寝息を立てる娘に気づき、母親は静かに呟く。
そして信号が緑になるのを待ちつつ、先程の、ある少年の申し出を思い出した。
"俺に、チャンスを下さい"
皆に最後のお願いをして部屋を出たとき、自分を追いかけ、そう頭を下げた彼。
……不思議と、不安も全くない。
彼なら娘の心を救うことができる、そう思えるのだ。
「Aも、私も……向き合わないと。」
青信号になり、アクセルを踏む。
街灯の光が、車内を照らした。
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花鈴萌(プロフ) - ayadesuさん» 長い間応援していただきありがとうございます！同い年なんですねめちゃくちゃ嬉しいです……！同世代でイナイレ好きな子が少ないので……これからも頑張りますね！ (3月16日 0時) (
レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ayadesu - この小説ができた頃から応援してます！！私も作者さんと同い年なので勝手に親近感を感じながらも、こんな上手にお話が作れるなんてすごい！と思いながら読んでいます。これからも頑張ってください！ (3月11日 21時) (レス) @page9 id: 108ac644bd (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - ありすさん» 長い間応援して頂いてありがとうございます！大好きといっていただけて本当にありがたいです。これからも頑張っていきますので、完結までよろしくお願い致します！ (3月2日 11時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - いつのまにかめっちゃ進んでてびっくりしてます！！このお話ほんとに大好きなので続きが楽しみです！作者さんのペースで頑張ってください！ (2月27日 14時) (レス) @page3 id: d48b66107c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年2月18日 0時
