２０４ 日常の写真 ページ20
「……っ、」
あまりに厳しい現実、そして源家の辛い過去。
その場の誰もが、思わず言葉を失った。
一方、源のお母さんはそんな俺たちに、先程とは打って変わった明るい声で呼びかける。
「ただ、皆さんのご存知の通り、Aは再びサッカーを好きになる事が出来ました。代表のマネージャーを望むほど……それは、皆さんのおかげです。」
「でも、さっきAちゃんは、」
ふと、吹雪が呟いたその言葉、途切れたその先は言われなくともすぐに分かった。
源がサッカーを好きなこと、そしてマネージャーを望んだことは勿論間違いない。
ただ、先程源はこのチームにいると辛い……確かに、そう言ったのだ。
「ええ、その通りです」
それに対して源のお母さんは大きく頷いて、次にその視線を一星に向けた。
そして、再び口を開く。
「ここで、一星くんの話に繋がります」
「……！」
驚いたのか目を大きく見開く一星、しかしすぐに何かを察したらしく、顎に手を添えて何かを思考するような仕草をする。
一星の話……つまり、源が二重人格なのではないかという推測のことだ。
先程、源のお母さんはそれが半分合っていると俺たちに言ったが、今の話とどう繋がるのだろうか。
状況が理解しきれず呆然とする一同に、源のお母さんは更に言葉を続けた。
「元々、Aは最後の思い出作りとしてマネージャーになりました。良く言えば諦めがついていたんです。でもここで過ごすうちに、その意志が揺らいでしまった。」
「……生きたい、そう思うようになったということですか？」
はっとしたような野坂の言葉に、源のお母さんが首を縦に振った。
一方、俺は源が涙を流していたあの夜のことを思い出して、思わず息を呑む。
"居場所が欲しい"
……あの時はなぜ源があんなことを言ったのか、全く分からなかった。
けれど今ならば、その言葉の意味が痛いほど分かる。
「Aからは、毎日のように写真付きで連絡が来てました。本当に楽しかったんでしょうね。皆と過ごす時間が……」
続いて、源のお母さんはスマホを開いて、俺たちに源とのチャット画面を見せた。
そこには、スーパーでの買い出しや、勉強会……当たり前の日常、そして皆の笑顔が映し出されていた写真が並んでいる。
「Aはここで人と関わる豊かさや喜びを知り、生きたい、そういう強い希望を抱きました。……けれど彼女の根底にはまた、諦めることの強迫観念もあったんです。」
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花鈴萌(プロフ) - ayadesuさん» 長い間応援していただきありがとうございます！同い年なんですねめちゃくちゃ嬉しいです……！同世代でイナイレ好きな子が少ないので……これからも頑張りますね！ (3月16日 0時) (
レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ayadesu - この小説ができた頃から応援してます！！私も作者さんと同い年なので勝手に親近感を感じながらも、こんな上手にお話が作れるなんてすごい！と思いながら読んでいます。これからも頑張ってください！ (3月11日 21時) (レス) @page9 id: 108ac644bd (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - ありすさん» 長い間応援して頂いてありがとうございます！大好きといっていただけて本当にありがたいです。これからも頑張っていきますので、完結までよろしくお願い致します！ (3月2日 11時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - いつのまにかめっちゃ進んでてびっくりしてます！！このお話ほんとに大好きなので続きが楽しみです！作者さんのペースで頑張ってください！ (2月27日 14時) (レス) @page3 id: d48b66107c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年2月18日 0時
