１９８ 心が折れる前に ページ14
『っ、悠馬も、皆も、前に進んでる。でも私は、』
揺らぐ視界、喉の奥から何かが込み上げる感覚に、私は咄嗟に顔を伏せる。
ああ、皆の前でこんな姿。
試合前なのに迷惑をかけた。
勝手な言葉で、大好きな悠馬を、皆を傷つけた。
足元に落ちた滴の跡を見つめながら、もう限界だ、そう思った。
『でも、それも今日で終わりです。』
深呼吸を何回か繰り返し、なんとかして心を落ち着かせる。
"本当になんとも思わないの？"
脳裏でそう問いかける声、私はそれを振り切るように涙を拭う。
……強くならなければ。
生きられない、そんな自分の運命を受け入れるために。
弱い自分を追い出して、私は毅然として前を向いた。
『本当にお世話になりました』
「っ、源、」
「Aちゃん……！」
そのまま車椅子の向きを変えて扉へ向かえば、背後から、焦ったような、必死なような皆の声が私の心を引き留める。
それでも、私はもう止まることは出来なかった。
……いち早く、この施設を出たい。
心が折れてしまう前に、決心が変わる前に。
できるだけ早く、車椅子の車輪を押しながら廊下に出る。
すると、廊下の真ん中で、焦ったような表情のお母さんとすれ違って、私は思わず動きを止めた。
『お母さん』
「A……」
……心配して見に来ようとしていたのだろうか。
自分で決めていい、自分で言いなさい、そう言ったのはお母さんなのに。
『ごめん、荷物の回収よろしく』
気を取り直して私はそう言い残し、再び廊下を進み始める。
お母さんは何か言いたそうにしていたけれど、小さく頷いて、なぜか私と反対方向に歩き出した。
.
風丸side
「Aちゃん！」
無機質な音を立てて、スライド式の扉が閉まる。
源が再度振り返ることはなく、最後まで引き留めようとしていた大谷や稲森は扉の前でただ立ち尽くした。
「源……」
広がる沈黙の中、俺は小さく、その名前を呟く。
……あんなに感情的な源を見たのは、初めてだった。
"本当にお世話になりました"
源が俺達に伝えた、マネージャーを辞めたいということ、チームにいると辛いということ＿
今なら、わかる。
それは間違いなく、源の本心なのだ。
……けれど俺が気になったのは、源がまるで自分に言い聞かせるように、諦めなければならない、そう繰り返していた事。
＿どうして、そこまで？
そんな疑問が浮かんだ時、監督が大きく手を叩いて、俺達は顔を上げた。
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花鈴萌(プロフ) - ayadesuさん» 長い間応援していただきありがとうございます！同い年なんですねめちゃくちゃ嬉しいです……！同世代でイナイレ好きな子が少ないので……これからも頑張りますね！ (3月16日 0時) (
レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ayadesu - この小説ができた頃から応援してます！！私も作者さんと同い年なので勝手に親近感を感じながらも、こんな上手にお話が作れるなんてすごい！と思いながら読んでいます。これからも頑張ってください！ (3月11日 21時) (レス) @page9 id: 108ac644bd (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - ありすさん» 長い間応援して頂いてありがとうございます！大好きといっていただけて本当にありがたいです。これからも頑張っていきますので、完結までよろしくお願い致します！ (3月2日 11時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - いつのまにかめっちゃ進んでてびっくりしてます！！このお話ほんとに大好きなので続きが楽しみです！作者さんのペースで頑張ってください！ (2月27日 14時) (レス) @page3 id: d48b66107c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年2月18日 0時
