１８６ 楽 ページ2
Aside
＿目が覚めてから、数時間経った。
「体調はどうですか。一時はかなり危ない状態だったんですよ。」
見るからにベテランらしき看護師さんが点滴の準備をしながらそう言って、しきりに私の様子を伺う。
私は点滴パックから一定の速度で落ちていく滴を飽きもせずに眺めて、すみません、もう平気です、そう空返事をした。
『……。』
……今までにない程、すっきりとした、不思議な気分。
これまでの、「病気がバレたらどうしよう」とか、「まだ生きていたい」とか、そんなイナズマジャパンに入ってからずっと考え続けていたことは殆ど頭から無くなった。
ただ、身体が軽い。
死ぬのも怖くない。気持ちが本当に楽だ。
"今まで動けなかったけど、もう動けそう。あとは任せて"
＿"あれ"は、どうやら現実の出来事だったらしい。
「A、本当に平気なの？」
『うん、もうほんとに気持ちも身体も凄く楽。心配かけてごめんね、お母さん』
……先程から私の隣についてくれているのは、遠くで仕事をしているはずのお母さんだ。
どうやら、私が倒れたと聞いて、急いで駆けつけてくれたらしい。
お母さんは私の言葉に安堵したように息をついてから、暫くしてそういえば、と言葉を続けた。
「私はもういいけど、イナズマジャパンの皆は、ほんとに心配してたんだよ。」
『イナズマジャパン……ああ。そっか、もう、気づかれちゃったんだ』
……それはそうだ、と心の中で呟く。
今思い出してみれば、あんな全員の前で倒れて病気がばれないはずがない。
悠馬も、光くんも、士郎さんも、稲森くんも、風丸さんも、皆も＿
知ってしまったんだろう。全部。
嘘をついたことを怒っているだろうか。それとも心配してくれているのだろうか、驚いているだろうか。
けれど、焦りや、やってしまったという感情は全く入ってこなかった。
ただ申し訳ないな、そう漠然と思う。
「……でも、びっくりした。A、いつの間にかイナズマジャパンの一員になってたんだね」
お母さんがそう笑って窓を開ければ、眩い光と朝の爽やかな風が頬を撫でた。
私は少しだけ言葉に詰まったけれど、やがて、徐に上体を起こす。
「……？どうしたの、A」
不思議そうに私に駆け寄るお母さん、私はその瞳を真っ直ぐに見つめて、笑顔で口を開いた。
『お母さん、私、イナズマジャパンを離脱しようと思う。』
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花鈴萌(プロフ) - ayadesuさん» 長い間応援していただきありがとうございます！同い年なんですねめちゃくちゃ嬉しいです……！同世代でイナイレ好きな子が少ないので……これからも頑張りますね！ (3月16日 0時) (
レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ayadesu - この小説ができた頃から応援してます！！私も作者さんと同い年なので勝手に親近感を感じながらも、こんな上手にお話が作れるなんてすごい！と思いながら読んでいます。これからも頑張ってください！ (3月11日 21時) (レス) @page9 id: 108ac644bd (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - ありすさん» 長い間応援して頂いてありがとうございます！大好きといっていただけて本当にありがたいです。これからも頑張っていきますので、完結までよろしくお願い致します！ (3月2日 11時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - いつのまにかめっちゃ進んでてびっくりしてます！！このお話ほんとに大好きなので続きが楽しみです！作者さんのペースで頑張ってください！ (2月27日 14時) (レス) @page3 id: d48b66107c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2024年2月18日 0時
