余命半年のマネージャーstage４〈イナズマイレブンオリオンの刻印〉 (ページ8)

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１４５　完璧と距離ページ8

数時間後＿

「FFIアジア予選も残り二試合、いよいよ佳境を迎えました！日本代表はこれまで三戦全勝！この試合に勝てば、本戦出場を一気に引き寄せる事が出来ます！」

スタジアムに響く、サポーターの大歓声。

今回の試合の相手であるサウジアラビアの紹介がされれば、アップをしている日本の選手達や私達マネージャーにも緊張感が漂った。

そんな中、私はようやく準備を終えてベンチに座り、ほっと息をつく。

『無事に来れて、よかった』

一時は、どうなるかと思った。

ボタンを押せばバスが事故を起こしてしまうし、その命令はただでさえ弱っている一星くんの心を相当蝕むもので。

試合まで時間も無く、もう間に合わないんじゃないかと不安にもなったけど＿

と、ここまで考えて、私はフィールドに目を向ける。

稲森くんと灰崎くんと話している14番の後ろ姿を見つけて、私は思わず笑みを漏らした。

(……やっぱり凄いね、悠馬)

心の中で、そう呟く。

今日のピンチもまた、悠馬が助けてくれた。

どうやら前々から予測して準備していたらしく、解決もあっという間。

音量をいじったりして灰崎くんにはちょっと悪いことしちゃったけど、まあ、致し方ない……と思う。

『悠馬って、本当に完璧なんだよね……』

一星くんを助けると決めてから、悠馬と進んできた今日までの日々……それは今思えば、とても短く感じる。

いつも悠馬の先を見る力や情報収集能力に助けられたし、励ましてもらって、そのお陰で今日を迎えられた。

ただ、悠馬に助けられるその度に、悠馬が遠くなっていく気がしてしまう自分もいると最近気づいた。

"悠馬はあれも、これも出来る……じゃあ私は？"

そう考えてみれば、助けられてばっかりなのに、貰ってばっかりなのに……私には返せるものが何もなかったのだ。

『っ、』

浮かんで止まらなくなった暗い考えを掻き消すように、私は首を横に振る。

そしてふと、一人たたずむ一星くんに目を向けた。

(……一星くん)

正直な話、今日の結末はどうなるかは分からない。

結局は一星くん次第で、彼自身が自分と向き合い、その上で前に進む必要があると悠馬は言っていた。

……確かに、自分と向き合うことの難しさは私も誰よりも分かっている。

けれど、彼ならば＿

「Aちゃん、試合始まるよ」

『あっ、うん！』

杏奈ちゃんの言葉に、我に返る。
今は試合に集中しよう、そう心の中で呟いた。

そしてついに、ホイッスルは鳴る。