余命半年のマネージャーstage４〈イナズマイレブンオリオンの刻印〉 (ページ7)

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１４４　不思議な感じページ7

「すまない、源」

『いえ、わ、私こそ』

風丸さんと目を合わせたまま、一歩、また一歩と後退りをする。

折角の、話せるチャンスなのに。

話したそうにしていたという悠馬の言葉も頭を過ぎる。
けれど、何を聞かれるかと思えば、身体も心もどうしても言うことを聞かない。

『っ、』

＿結局何も言葉に出来ず、思わず逃げようと背を向けかけてしまった、その時。

ふと、風丸さんが口を開いた。

「いよいよ今日だな。試合」

『え……』

予想外の話題に、私はゆっくりと振り返る。

風丸さんは言葉を続けた。

「今回の試合に勝てば世界への道も見えて来るんだ。絶対に負けられない。」

『あっ、えっと……そ、そうですね！私達も、全力で応援します』

「ありがとう。ほんと、マネージャーには感謝しかないよ」

＿当たり前のように、続いていく会話。

恐れていた質問どころか、あの夜の話も全くされる気配がない。

あんなことがあれば気分を悪くするか、探り入れるとか、過剰に気を遣ってしまうのが普通なのに……。

「……それと、上手く行くと良いな。源と野坂の計画」

『なぜ、それを！？』

「実は痛がる役割を任されたとき、野坂から少し話は聞いてたんだ」

＿でも、風丸さんは当たり前のように喋って、私に笑いかけてくれる。

話していると楽しくて、落ち着いて……安心というか、胸がじんわりと暖かくなる。

……今までにない、不思議な感じ。

『……かっ、風丸さん！』

「ん？」

咄嗟に声をかけてしまい、思わず言葉に詰まる。

でも今なら言える気がして、私は口を開いた。

『……そ、その！痛がる練習の時、逃げちゃってごめんなさい』

先程までの自分なら絶対に言えない言葉。

風丸さんは一瞬驚いたような顔をしたけれど、すぐに笑い出した。

「……あー、やっぱりあれ逃げてたんだな。ザリガニが入ったバケツ押し付けられたと思ったら、すぐ吹雪のとこ行かれて……まあ、割とショックだったよ」

『うっ、ごめんなさい』

「はは、気にするなって」

……身体が、軽くなっていく。

胸の奥で固まっていたものが、すぅっと解けていくのが分かった。

.

.

＿そうして一通り笑ってから、風丸さんは時計を見てあっと声をあげる。

「……あ、俺、そろそろ準備しないと。源も戻るんだろ？」

『あ、』

前を歩き出す風丸さん。

私は、その腕を掴んで、顔を上げた。

「源？」

『……試合が終わったら、話さなくちゃいけない事が、あるんです』