余命半年のマネージャーstage４〈イナズマイレブンオリオンの刻印〉 (ページ5)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:24,391 hit

１４２　やってみせるページ5

野坂 side

『悠馬、どうしよう……！』

＿翌朝。

試合前の朝食を終え、トレーを片付けていたところに真っ青な顔でやってきたのは、Aだった。

苦しそうに息を立てて咳き込んでいる彼女に、僕は駆け寄る。

「A、大丈夫？ほら、とりあえず水を飲んで……」

『……それよりっ、それより大変なのっ！』

「大変？」

Aは差し出した水に首を横にふって、必死の表情で僕の肩を掴む。

呆気に取られていれば、Aは周りに人がいないのを確認して、大きく息を吸った。

『さっき、一星くんがいないって思って、急いで追いかけてっ、そしたら黒服がいて、あと誰かとモニターで話しててっ』

「……組織か」

＿なんとなく、その話の先が想像出来る。

今、もはや財団にとって一星くんはほとんど使い物にならない。

手足のない財団に、残された選択肢は……

『バスのタイヤに細工したって、ボタンを渡してて……！このままじゃ皆がっ、』

ここまで言い切り、苦しそうに過呼吸になっていくA。

僕は急いで水を飲ませ、その背中を擦りながら頭を働かせる。

『はあっ、はあっ、』

「A、ゆっくり吸って……はいて……そう」

確かに、今までの財団の事例から、こんな事もあろうかと用意はしておいた。

けれど……正直、時間的にはかなり厳しい。

……本当に、出来るのか。

『……許せない』

「え？」

突然呟かれたその言葉、僕はAに目を向ける。

Aは、言葉を続けた。

『一星くんの心のことも、光くんが家族を事故で亡くしていることも知ってる筈なのに……！それを分かった上で事故を起こさせて、チームの皆も一星くんも苦しめて！』

「……！」

『必ず、必ず助ける……、っ、一星くんも、皆も……っ、』

僕は思わず、息を呑む。

Aのこんな表情は、初めてだった。

(……そうだ。)

自分は、何を迷っていたのだろう。
……出来るかなんて関係無い。

"世界を変える"その一番の鍵は、とにかく行動すること……自分を信じて、やりきることだ。

「大丈夫だよ、A。」

『悠馬……？』

不思議そうに顔を上げるAに、僕は頷く。

そして、いつものように余裕な微笑みを浮かべてみせた。

「……実は、こんな事もあろうかと用意はしていたんだ。」

『……そ、そうなの！？』

驚いたような顔をするA、僕は頷く。

……Aが必死になって掴んでくれたこの綻びは、絶対に離さない。

「……やってみせるさ」