余命半年のマネージャーstage４〈イナズマイレブンオリオンの刻印〉 (ページ16)

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１５３　選択（修正版）ページ16

＿その後の数秒のことは、あまり思い出せない。

視界のすべてがスローモーションのように動いた。

そして俺は、いつの間にか蹴る体制を瞬時に変えて、ボールを外に弾いて……。

気づけば大歓声の中、フィールドに横たわっていた。

「……。」

一体俺は、どうしたんだ。

頭はぐちゃぐちゃで、訳の分からないまま上体を起こす。

ふと肢体に誰かの影が映って、俺は顔を上げた。

「……。」

「……選んだね。本当の自分と向き合うという、選択肢を。」

野坂はいつものようにすました顔、そして変わらない口調で、微笑みを浮かべる。

でもそれは今までに見たことないほど優しい表情で、嬉しそうにも見えた。

「君はいろんな気持ちをずっと隠してきた。でも、何もかも隠し続けることは、できないんだ」

「……、」

俺はまだ混乱していて、声も出さずにその言葉を受け止める。

野坂は、さあ、とこちらに手を差し出した。

「……。」

……取っていいのか、この手を。

本当のサッカーを、自由に、みんなと、楽しんでも良いのか。
こんな、俺が……。

「あ……」

頭ではそう迷っていても、自然と手が前へ出る。

力強く俺を掴んだその手。
今度は離されることは無く、俺は立ち上がった。

「自分の心に正直になれ。道は必ず、その先に見えてくる。」

……自分の心に、正直に。

野坂のその言葉を、俺は反芻するように心の中で繰り返す。

正直、今俺の心はぐちゃぐちゃで、何が正直な、どれが俺の本当の気持ちなのかが分からない。

でも、一つ確かなのは……熱くて楽しいサッカーを、自由にやりたいということ。

「……、よし。」

鳴り響くホイッスル。
俺は、自分の心に正直になってみることにした。

.

Aside

(一星くん……凄く楽しそう)

フィールドには、先程とは違いすっきりとした表情でボールを追いかける一星くん。

ゴールをわざと外したときはどうしようかと思ったけれど、まさか悠馬があんなことをするなんて凄く驚いた。

監督曰く、命をかけて策略を実行した、ということらしい。

なんという、意志の強さ、そして周到さ。

それに比べて私なんて、ここで座って見ていることしかできないのは……

「……なんか、一星君様子が変じゃない？」

『えっ、……っ！』

杏奈さんの言葉、私は我に返ってすぐ一星くんを目で追いかける。

そして、その光景に、思わず声を漏らした。