余命半年のマネージャーstage４〈イナズマイレブンオリオンの刻印〉 (ページ13)

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１５０　わがままページ13

『がんばれ、一星くん……！』

私は戸惑いながらも前へと走る一星くんを、じっと目で追いかける。

きっと彼は……光くんは今、すごく苦しんでいるはずだ。

強くて優しかった兄をまとい、兄を演じるあまり、兄として弟を守るために大好きなサッカーを、いわばその手で汚した。

……ただ夢中になっている時は良い。何も思わないし、自分を疑うことはない。

でもきっと今、彼は無意識に、自分が充ではないことを思い出してきているのだ。

　＿揺るぎない存在だった充が、消えかけている

「おおっ、交わしたぞ！！！」

剛陣さんの驚いたような声。

ボールをもって、ただがむしゃらに走っていく一星くんの姿に、私は大きく頷く。

サッカーを心から楽しむことはきっと、オリオンの使徒としての役割を放棄すること＿

つまり、兄としての生き方をやめることで、光くんの中から充が完全にいなくなってしまう。

(それは、すごくさみしい。……わかるよ)

「一星、ゴールキーパーと1対１！！これはチャンスだ！！！」

……でも、それでも。

「一星っ、打てー！！！！！」

私は一星くんに生きてほしい。充ではなく光として。

私が欲しくて欲しくてたまらなかった、この先の、長い長いこれからを。

……一星くんのためとか言いつつ、根本は私のためなのかもしれない。

これは私の、わがままだ。

未来を、自分らしく＿

「……一星、シュート！！！」

『……っ、！！』

……お願い、入って。

誰もが注目する中、ボールは軌道を描き、ゴールへ。

相手キーパーが手を伸ばして……

『っ、』

ガシャン、という音。

……ぶつかったのはフェンスだった。

「おーっと、おしい！僅かに外れましたっ！」

『……。』

＿恐らく、一星くんはまだ悩んでいる。

今のは、狙って外したものだ。

(一星くん、どうして……)

がんばって、ふみだして。

本当の自分に、気づいて……

そんな届かない思いと共に顔を向ければ、彼はやはり頭を抱えて苦しそうで、何か独り言を言っているようだった。

『……っ、』

胸が痛い。

今私と悠馬がしていることは、確かに一星くんを助けるために必要なこと。

でも同時に、今の一星くんを苦しめることにもなる。

……それでも、決めたことだ。

『……ん？』

不意に、サウジアラビアの選手が一星くんに接近したのが見えた。

何かを囁いた後、一気に一星くんの顔色が変わる。

(あいつ、一星くんに、一体何を……？)