残り時間 4 【鬼滅の刃】

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そう言う、Aの声は震えていた。

ずっと、気になっていたんだろう。




お館様は、Aが鴉の名を知らないことに驚いているご様子だった。









俺は、Aの鴉が名を教えたがらない理由を知っていた。

俺が柱になる前、俺の鴉が、話していた。

Aの鴉のように、名を教えたがらない鴉は少なくはないらしい。

理由を聞いた時、胸が詰まった。

鎹鴉特有の想いに、心打たれた。



俺たちよりも遥かに多い別れ。

それでも、その別れを乗り越え、鎹鴉としての責務を全うせんとする誇りと姿勢。

俺たち剣士は、本当に沢山の支えがあって生かされているのだ、と、心の底から思った瞬間だった。




…それでも、柱となったならば、もう名を教えていると思っていた。



Aのことだ、きっと鴉とも仲良くやっているのだろう。

すっかり名で呼び合うようになり、鴉の寂しい気持ちまでも溶かしているのだろう。

そう、思っていたが、

まだ、知らなかったとは、、

なんと哀しく、残酷な、、、








加えて、俺は、お館様のお話を聞いて、Aの要望を聞いて、思った。



この二人は似ている、と。



お館様が仰るように、俺たちはにとって名前)の我儘は、嬉しいものだ。

希望を言うことが普段から少ないAだ。叶えたいと思うのは当たり前だ。





…だが、それをお館様が仰るのか？

誰よりもお館様は多くのことを諦めてきただろう。

俺はAに話すお館様を見て、お館様にももっと貪欲になって頂きたいと思った。




2人は、欲がなさすぎる。

他人のことを考えすぎる。

無意識のうちに気を遣ってしまえる。

そんな2人だ。



そして、やっと見出した願いが、やはり、子供のような、そんな純粋な我儘ではなかった。

要望すら、我儘では済まない。


嗚呼、何故、この2人はこんなにも優しいのか。









…今はそのことが、すごく残酷なことに思える。









　

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