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一方その頃東京では ページ27

東京に帰った伊地知は屍のように明後日の方を向いていた。

『そんな…あぁ…私は今後どう生きていけば…』

東京校の待合室の椅子に腰掛けてそう呟いてみても思い出すのは駅で驚きながらも引きつった笑顔を浮かべるAの顔だけ。

『Aさん…嫌わないでください…』

そんな伊地知の独り言は授業の終わりを告げる鐘により誰にも届くことなく消えてしまった。

カサリ

隣に置いた紙袋が音を立てる。

今日伊地知が東京校に来ていたのは他でもない、五条悟に京都土産を届ける為だ。しかし授業中であったため待合室にて待っていたのだが、これが良くなかった。一人でいると後悔と罪悪感とほんの少しの犯罪意識に押しつぶされそうになる。

伊地知は深いため息をついた。どうしてもAに嫌われたくは無いと、その事だけで頭がいっぱいだった。

ちょうどその時、廊下から足音が聞こえてきた。

五条がようやく来たのかと思い、紙袋を持った時、勢い良く扉が開かれ、そこには虎杖悠仁が立っていた。

『おや虎杖君。今日も元気そうでなによりです。ところで、五条さんを見かけませんでした?』

お土産を持ってきたのですが と付け加えれば『俺の分は!?』とこれまた元気な返事が帰ってきた。

『虎杖君の分もありますよ。アレルギーは無かったですよね。』

紙袋をガサガサとあさり取り出した小さめの箱。それを虎杖は嬉しそうに受け取った。

遠慮なく破られていく包装紙を見ているとだんだん心の落ち着きが戻ってきた。五条はまだ来ない。自分から頼んでおいて身勝手な人である。

伊地知はまだ冷たさの残るペットボトルに入ったお茶を飲み始めた。冷たいお茶が五臓六腑に染み渡ると今日もしっかり生きていけそうな気がした。

そんな時、虎杖悠二が聞いてきた。

『なあ伊地知さん、Aって痴漢にあって何かしらの呪いかけられたんだろ?大丈夫なのか?ってかさ、その時かけられた呪いってどんな効果なの?俺全然教えられてないんだけど』

伊地知は硬直した。聞かないで欲しかった。
口の端からお茶が零れて慌ててハンカチで拭った。

何度でも言う。聞かないで欲しかった。

せめて自分の口から言わせないで欲しかった。五条さんが言えばいいのに。五条さんから聞けばええやん。そんな事を思った。

目の前の虎杖悠二は今この時も純粋な仲間を思いやる瞳で自分を見つめている。

そっと携帯を開き、五条悟と書かれた場所を押す。
そこで気がついたが、先程連絡が来ていたようだった。

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善良(ぜんら)(プロフ) - 続編公開しました (2022年5月14日 18時) (レス) id: 130d797b81 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 続編のパスワード教えて貰えませんか? (2022年3月21日 16時) (レス) id: f998eec890 (このIDを非表示/違反報告)
友希那(すぐるっちの恋人) - 続編パスワード教えてくれませんか? (2022年1月31日 22時) (レス) @page27 id: 63dcc81372 (このIDを非表示/違反報告)
nana(プロフ) - すみません、続編のパスワード教えて貰えませんか、? (2022年1月28日 20時) (レス) @page27 id: 7f38ffe42c (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - まだ更新しておりますか? (2022年1月2日 22時) (レス) id: cfba35088c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木の木 | 作成日時:2021年3月25日 16時

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