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家に帰り手紙の中身を開けた。本当は見るつもりなんてなかったけど、手元にあると思うと開けないということは出来なかった。
「なんだよこれ」
手紙には、大ちゃんの持病のことが書かれていたことは事実だった。
「俺、病気でいなくなるって。」
たった1行だけ。その下の行は空白で妙にヨレていた。
涙の跡だ。
俺はその1行を消しゴムで消した。大ちゃんがいなくなることを改竄するかのように。
次の日から大ちゃんは学校に来なくなった。
山「何があったのか知ってるんでしょ。」
大ちゃんの席を見ながら不安気な顔を浮かべていた。
伊「なんのこと?風邪でも引いたんじゃないの?笑」
咄嗟に左手に握りしめた手紙をポケットの中に閉まった。
山「何隠してるの。」
山田が涙を浮かべた。山田も大ちゃんもごめん。あの手紙は渡せない。だってあの手紙は誰のことも幸せにしないだろ?
伊「本当になんでもないからさ。」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。あの日以来山田と俺は疎遠になった。挨拶も話も普通にするけどなんだか盛り上がりに欠ける。
そして、事件が起きて大ちゃんはいなくなった。
真実は葬られたままだった。周りの大人は大ちゃんのおばあちゃんが亡くなったことが彼の死因だと思っていた。
実際、大ちゃんが病気だったことは俺以外の誰も知っていなかった。大ちゃんは残り1週間の命で病気に苛まれていく前にいなくなる決断をしたんだ。
山「俺のせいで…」
山田の繊細な心は日に日に大ちゃんがいなくなったことを、自分のせいであるという勘違いを引き起こした。ずっと一緒にいた幼なじみだ。そうなるのも無理はない。
大ちゃんの死因は紛れもなく病気のせいだ。仕方の無いことだったんだよ。
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作者名:まる | 作成日時:2019年8月24日 12時