33 ページ33
.
( your side )
生まれて初めて、廉のことを怖いと思った。
廉のお母さんが亡くなった時、廉と交わしたあの約束は今思えば同情でしかなかった。
優太くんのことを忘れられるはずもないのに、無責任に廉と約束を交わして、私は廉を傷つけたのだ。
…本当は怖かった、とてつもなく。
廉が別人のようで、今まで私に優しく接していつも笑い合っていた廉はどこにもいなくて。
でも、それと同時にどうしようもない程に廉が可哀想に思えて。
お母さんを亡くして、私まで廉の傍から離れたら、廉はきっと壊れてしまう。ボロボロになってしまう。
そう考えたら、怖くて仕方がなかった。
.
廉「…ん、起きたん?」
カーテンから除く眩しい光に目を覚ませば、私のことを愛おしそうに見つめる廉が隣にいた。
『…うん。おはよう。』
廉「…はよ、」
昨日とは違う、少し光が戻ったような目。
寝起きだからなのかどこか幼くて、まるで昔の、お母さんを亡くす前の廉みたいだった。
廉「….、」
少しぎこちなく私を見た廉は、長くて細い腕をギュッと私に巻き付けた。
.
廉「…優太のほうがええの、?」
まるで捨てられた猫のような目でそう言った廉の声は微かに震えていて。
その言葉は、昨日私を抱いて膜越しに欲を放つ瞬間、彼が呟くように耳元で言った言葉と重なった。
"俺から、離れていかんで、"
あんなに激しく私のことを抱いたのに、最後だけはとてつもなく泣きそうな顔をしていた。
…きっと廉は、怖いんだ。
お母さんの時のように、また大切な誰かが傍からいなくなることが。
一人ぼっちになることが。
その闇の中から廉を救いあげて、安心させてあげられるのは他でもなく、
私しかいないから。
.
『…廉、昨日はごめんね。でも本当に優太くんとは何も無かったよ。
…あの約束、私は破らないよ、絶対。』
また1つ、廉に嘘を重ねて、自分の気持ちにも蓋をして。
優太くんのことは考えてはいけないと。
また私は同じ過ちを繰り返すんだ。
.
723人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななせ(プロフ) - ななみさん» 嬉しいです!!これからもっと面白く出来るように頑張ります! (2020年4月18日 20時) (レス) id: e113544416 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - はじめまして。読みはじめてから、どんどん話に引き込まれて、ここまで一気に読ませて頂きました。先が気になります!更新楽しみにお待ちしております。 (2020年4月18日 20時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ななせ(プロフ) - かほさん» 嬉しすぎます、、!これからもう少しだけ重くなる予感がするんですけどお楽しみにしていてください!笑 (2020年4月13日 22時) (レス) id: e113544416 (このIDを非表示/違反報告)
ななせ(プロフ) - ふーみんさん» 全話読んでくださってありがとうございます!これからもお楽しみに!(^ ^) (2020年4月13日 22時) (レス) id: e113544416 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - 初めて読みましたが非常に面白いです!こういう重いの大好きです!(笑)これからも楽しみにしております〜〜 (2020年4月13日 17時) (レス) id: 43e673b672 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ななせ | 作成日時:2020年2月8日 19時