永瀬くんの非リア脱出講座！ (ページ37)

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ごく普通の休み時間のこと。
私が1人でトイレに行ったその帰りのことだった。

教室へ戻る途中、いきなり水を浴びせられた。

訳が分からないまま周りを見渡すと、永瀬くんや勇太のファンの子たちがバケツや水鉄砲を持って仁王立ちしていた。

「髙橋A。あんたのこと腹立ってるんだよ！廉様からあんなにベタベタされて！」

「勇太様の彼女のくせに廉くんとも付き合ってるんでしょ？ずるいにも程があるんじゃないかしら？」

そう言って、私1人に対して大人数で水をかけてくる。
制服もすっかり水を吸いきっていて、廊下はもう水浸しになっている。

「何かヤバイことになってる！」

と、噂好きの野次馬さんたちは笑いながら教室から身を乗り出す。

「誰か助け…」

私がそう言いかけたとき、陽奈がこの大惨事に気づいたようだった。

「Aっ！」

陽奈は私の方に一目散に駆け寄ってきて、私をかばうようにして、永瀬くんと勇太の過激派ファンを睨む。

「私の大好きなAに何してくれんのよ！」

陽奈がそう怒鳴っても、過激派ファンたちは笑いながら私たちに水を浴びせ続けた。
まるで私たちが人間じゃないどころか、生き物でもないかのような扱いだ。

私たちが途方に暮れていると、人混みの中に困り果てている勇太が見えた。

「勇太！」

私がそう呼ぶと、

「先生呼ばなきゃだよな」

と、いきなりビビりまくる勇太。

そのとき、救世主が現れた。

「俺の好きな人のことそんなにいじめるとか、ほんま人としてどうかと思うわ」

私と陽奈を守るようにして立ちはだかった永瀬くんも水を浴びせられて一瞬でビシャ濡れになっていた。

「廉様に水かけちゃった…」

と、焦る永瀬くんと勇太の過激派ファンの動きは止まったみたいだ。

「こらー、何があったの！！！」

そう怒鳴る先生が来て、やっと落ち着くことが出来た。