【呪術廻戦】絡まって解けないように

贖罪-1 ページ18

「なぁ…俺、ちゃんと"父親"やれてるかな」



「心配なんだよ。母親の京子が死んで、片親になった事で…あの子が普通に暮らせなかったら、って」



「他人と比べたら稼ぎも少ない。贅沢させてやれないし、心細い思いもさせてる」



「俺はただ、他の子みたいに、普通に育ててやりたいだけなんだ」





パパ。大丈夫だよ、パパ。




ママはいないけど、パパがいてくれたらそれで




私、幸せだよ。







・


午前3時。目がパチリと覚めた。




布団から出て、コップに水を入れて一気に流しこむ。




お父さんが生きてる頃の夢だった。




『あの頃のまんま…』








私が寝静まったころに、お父さんは仲のいい、会社の同僚を家に呼んで相談していた。


「ああ、大丈夫だ。お前は立派に父親やってるよ」



って同僚が優しく慰めてくれてたのを



寝たフリをして実は聞いてた私。



＿＿「俺はただ、他の子みたいに、普通に育ててやりたいだけなんだ。」


普通に育つ、普通に生活して行く。


それがお父さんの望みだったもんね。



.




目が冴えてしまった私は、部屋を出て




静かな廊下を歩き出した。




歩く度ギシギシと鳴る音が、今は五月蝿く聞こえる。




辿り着いた先は、2輪の花。



自分が勝手に建てた、2人の墓である。



もっとも、ここに2人はいないけれど。



『来すぎかな。理子ちゃん、黒井さん』



居心地が良くて、よくここに来ていた。




『これからどうしようね、私。



ここ卒業したら普通に会社に就職して、結婚して…それをお父さんに報告したかった』



だけど。



『今の高専での暮らしも、嫌じゃないの。上層部はクソだけど、仲間には恵まれた』



だから。




『呪術師、続けてもいいかもなって。


仕事内容はクソだけど』




どう思う？




答えのない質問を呟く。




『まあ卒業までまだ時間あるし、ゆっくり考える事にするよ』



「苧環さん？」



『！七海じゃん。どしたの』



それはこちらの台詞です。と言う彼は深夜帯の任務だったのだろう。



彼はちらりと私の後ろの墓を見て



「お話中だったのですね。お邪魔してすみません」



七海はホント律儀だな。



『いいよ、もう終わったから』




「何のお話か聞いても？」





『呪術師はクソだなって話だよ』




「なんですか、それ。



…夏とはいえ、夜は冷える。部屋に戻りましょう」





『ああ、おやすみ。七海』




「おやすみなさい。苧環さん」

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