玉折-2 ページ16
▽
座学が終わった後、俺は自身の課題である
長距離の瞬間移動を試していた。
数回試すが思うようにいかず雑に頭を搔くと、後ろから足音。
『髪の毛立ってる、やば』
「見せもんじゃねぇっての」
振り返ると同期のAがいた。部屋着で。
『見えるもんはしょーがないでしょ』
指を指す先はAの部屋。窓が全開になっていて、カーテンが靡いている。
…窓から出てきたのか。
「そんで裸足?」
『そうゆう気分』
何だそれ。
しかも部屋着ぺらっぺらじゃん。着てる?それ。
女のキャミソール姿なんて見慣れてるハズなのに
コイツのは何か、見てはいけないものを見てる気がして直視出来ない。
なんか腹立つ。
「Aのせいでやる気なくなった。責任とれよ」
『はぁ?絶対私関係ないでしょ。
まあいいや。部屋来なよ』
足洗いたいしー、って先に部屋に向かうA。
そうやって簡単に部屋に誘うのは
「ずる」
.
『はいコーヒー』
「砂糖は」
『置いてるじゃん』
「こんなんで足りるわけないだろ」
『これでもかよ。糖尿病まっしぐらだな』
愚痴りながら台所に戻るAに牛乳もな、と声を掛ける。
ぐるりと見渡したアイツの部屋は、かなりシンプルで必要最低限の物しか置かれていなかった。
つまんね。そう思いながら自分の長い足を伸ばす。
「あ?」
伸ばした足の先にあった本棚。
何気なく見遣ると、この部屋に似合わない可愛らしいアルバムが。
開くと、Aの幼い頃の写真から中学の間の写真があった。
あ、担任が写ってる。
『それね。夜蛾オジサンがくれたの。わざわざ私の写真現像して、綺麗に貼ってくれてさ』
牛乳と、砂糖を瓶ごと持ったA。
今のコイツと、写真のコイツを見比べる。
…変わらねぇな。
「Aさ、」
『何?』
ずっと同じ顔。
「笑ったことある?」
Aの手が止まる。
『そりゃ、ある…』
「腹の底から?」
『…』
呆然とした表情で、立ち尽くしている。
気付いて無かったのかよ、コイツ。
「オマエの本当に笑ってる顔、俺も硝子も傑も見たことねーよ」
声色は変わってるけどな、って言いながら砂糖をコーヒーに入れる。
時計の音だけが響く。
『…そっか』
オマエの笑った顔、見たいんだけど
まだ先は長そうだな。
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1 - 泣きそうで😭感動モノがあって、呪術廻戦見ているからわかる場面もあって本当にありがとうございます🙏これからも頑張ってくださいね❗✌️ (11月5日 8時) (レス) @page36 id: 053afa639a (このIDを非表示/違反報告)
ましろ@桜川奈々(プロフ) - amroさん» コメントありがとうございます!まさかamroさんからコメントいただけるとは思わず感激しております…!応援ありがとうございます。私も陰ながらご活動応援しております。 (2021年9月6日 22時) (レス) id: aa54ca032f (このIDを非表示/違反報告)
amro(プロフ) - 初めまして、コメント失礼いたします。検索からこちらの作品で出会い一気に読み終えてしまいました。大好きなさしす組と主ちゃんの関係がとてもよくて最後は涙腺崩壊でした…。素敵な作品を拝ませて下さりありがとうございました!これからもご活動応援しています! (2021年7月28日 9時) (レス) id: 18748080be (このIDを非表示/違反報告)
桜川 奈々(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!涙腺を刺激できた(?)のであれば私も嬉しいです(´ω`) (2021年5月29日 22時) (レス) id: aa54ca032f (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 感涙見た時にはもう涙が止まらない。涙腺緩くなったと思った…。 (2021年5月29日 14時) (レス) id: 4534ab9975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜川 奈々 | 作成日時:2020年12月19日 0時