34本目 ページ35
、
掛け声と笛の音が飛び交う体育館に到着した。
練習を再開したところらしく,ご飯を食べた後の皿を大量に持った竹内さんとすれ違った。
邪魔にならないように,体育館の隅に移動する。
スタッフの方か,プレーをしていない選手にタオルを託そう,と思ったが練習をしている彼らに目がいった。
私とは全く違う体系の彼らのバレーは何故かすんなり頭の中に入っていく感覚になる。
よくわからない感覚に戸惑うが,それでもずっと彼らのバレーを見ていられた。
力強いスパイク,到底敵いそうにない高いブロック。
女子の私とは全く違うはずなのに,女子のプレーを見ている時より,男子のプレーのすべてを頭が理解しようと動いているようだった。
、
そして一際目立つあの人のプレー。
私の前で見せる不機嫌そうな顔は一切なく,楽しそうで真剣なその表情。
なにより綺麗なフォームのスパイク。
ああ,そういえば私の頭から離れないサーブの彼は何処にいるのだろうと考える。
2,3年前もの選手なのだから,全日本にもう選抜されていなくても可笑しくはない。
けれど心のどこかでそんな彼のサーブを生で見てみたいと思っている自分がいた。
バレーが好きでも,強くなりたいと思っているわけでもないのに変な感情だ。
、
、
そんなこんなで彼らのプレーに目を引かれていると,プレーを終えたあの人がコートを出た。
ドリンクの入ったボトルを片手に何かを探しているようだった。
「…あれ,俺のタオル……」
そんな声が聞こえ,片手にある彼のタオルの存在を思い出した。
慌てて彼の元に駆け寄る。
、
「あの、」
彼はパッと顔を上げた。
途端に眉間にしわを寄せるがそれはもう慣れたことだった。
慣れとは怖いもので,昨日までその表情を見るだけでイライラしていたが今はもうそんな感情も湧かない。
「タオル,バスの前に落ちてました」
タオルを前に差し出した。
「あ、」と声を漏らしたその人。
彼は恐る恐るといった感じでそのタオルを受け取った。
眉間にしわを寄せたまま,何かを言いたそうに口をもごもごさせている。
その不思議な表情に吹き出しそうになりながらも,女子の練習再開の時間に近づいていることに気が付き,私は何も言わず軽くお辞儀をしてその場を去った。
、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 720人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪 - 43ページ42本目文章おかしいです (2019年11月17日 20時) (
レス) id: e28ee6ef13 (このIDを非表示/違反報告)
21子(プロフ) - 更新めちゃめちゃ楽しみにしてます！！ (2019年11月14日 21時) (レス) id: fe40dbd9a4 (このIDを非表示/違反報告)
リタ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (2019年11月13日 16時) (レス) id: 46e4a96814 (このIDを非表示/違反報告)
わかな - 更新ばり楽しみです (2019年11月7日 23時) (レス) id: 5c2b6ff2d8 (このIDを非表示/違反報告)
ひかるん(プロフ) - コメント2回目です笑夢主のバレーがどう成長していくけ楽しみです！落ちも楽しみです…笑更新頑張ってください！ (2019年11月7日 22時) (レス) id: 1f4ce4e8e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海獅子
| 作成日時：2019年11月4日 17時
